合併では、消滅する会社の権利義務が、存続会社または新設会社にまとめて引き継がれます。その結果、株主の立場や株式価値、債権者にも重大な影響が生じることがあります。
そこで会社法は、合併に反対する一定の株主には株式買取請求権を、各当事会社の債権者には合併への異議を認めています。
合併に反対する株主は株式買取請求権を行使できる
株式買取請求権とは
株式買取請求権とは、合併に反対する一定の株主が、会社に対して自分の株式を公正な価格で買い取るよう請求できる権利です。
吸収合併と新設合併のいずれでも、一定の要件を満たす当事会社の株主が対象となります。
行使のために必要な手続
株式買取請求権を行使するには、原則として次の対応が必要です。
- 合併契約の承認を議題とする株主総会に先立ち、会社に合併へ反対する旨を通知する
- その株主総会で、実際に合併に反対する
これらを含む会社法上の要件を満たした株主が、会社に買取りを請求できます。合併契約の承認は、原則として株主総会の特別決議によります。ただし、一定の要件を満たす簡易合併や略式合併では、株主総会の承認が不要となる場合があります。
買取価格は「公正な価格」
株式の買取価格は、公正な価格でなければなりません。
なお、株式会社が組織再編に伴う株式買取請求に応じる場合、その買取価格について「株式会社に生じた剰余金のうち分配可能額の範囲内」という財源規制は適用されません。
合併に異議がある債権者は異議を述べられる
債権者の異議申立てとは
合併契約について当事会社双方の株主総会で承認決議が可決された場合、各当事会社の債権者は、原則として、その債務者である当事会社に対して合併への異議を述べられます。
異議を述べた債権者には、原則として、弁済や相当な担保の提供などによる保護が図られます。
会社が行う公告・個別催告
各当事会社は、合併することと、債権者が一定期間内に異議を述べられることなどを官報で公告します。また、知れている債権者には、個別に催告を行わなければなりません。
債権者は、公告や催告で示された期間内に、債務者である会社に異議を述べます。
異議を述べた債権者への対応
合併に対して異議を述べた債権者には、原則として会社が次のいずれかの対応をしなければなりません。
- 債務を弁済する
- 相当な担保を提供する
- 弁済を受けさせることを目的として、相当な財産を信託会社に信託する
このように、株主には株式買取請求権が認められ、債権者には合併に対する異議を述べる機会が保障されています。
株式買取請求権と債権者の異議の違い
| 項目 | 株主 | 債権者 |
|---|---|---|
| 手続 | 株式買取請求権 | 合併への異議 |
| 目的 | 株式を公正な価格で買い取ってもらう | 弁済や担保提供などによる保護を受ける |
| 会社に求める対応 | 株式の公正な価格での買取り | 弁済、担保提供、信託など |
| 主な前提 | 事前の反対通知と株主総会での反対 | 公告・催告で示された期間内の異議 |
まとめ
合併に反対する一定の株主は、合併に反対する旨を事前に通知し、株主総会で反対するなどの要件を満たせば、株式買取請求権を行使できます。買取価格は公正な価格でなければなりません。
一方、各当事会社の債権者は、公告や個別催告で示された期間内に合併への異議を述べられます。異議を述べた債権者に対しては、会社が弁済、担保提供、信託などの保護措置を講じるのが原則です。
