国と地方公共団体の間では、国の関与や事務の処理をめぐって意見が対立することがあります。また、都道府県と市町村、地方公共団体の機関同士が対立する場合もあります。
地方自治法は、このような紛争を処理する仕組みとして、主に国地方係争処理委員会と自治紛争処理委員を定めています。両者の違いは、誰が関係する紛争を扱うかにあります。
国と地方公共団体の紛争処理機関とは
紛争の対象となる「国の関与」とは
「関与」とは、国や都道府県の機関が、地方公共団体の事務処理について行う行為です。助言・勧告、資料提出の要求、是正の要求、許可・認可・承認、指示、代執行、協議などが含まれます。
国や都道府県が関与するには、原則として法律または法律に基づく政令の根拠が必要です。また、関与は目的を達成するための必要最小限度にとどめ、地方公共団体の自主性や自立性に配慮しなければなりません。
紛争処理機関の大まかな役割分担
| 機関 | 主な対象 |
|---|---|
| 国地方係争処理委員会 | 国の行政庁と普通地方公共団体の間の紛争 |
| 自治紛争処理委員 | 普通地方公共団体同士、機関同士の紛争や、都道府県の関与に関する紛争など |
国地方係争処理委員会とは
対象となる紛争
国地方係争処理委員会は、普通地方公共団体の長などが担当する事務について、国の行政庁から受けた関与に不服がある場合に利用されます。
- 是正の要求や許可の拒否など、公権力の行使に当たる関与
- 国の行政庁が必要な処理をしない不作為
- 国との協議が調わない場合
ただし、国の関与であればすべて審査対象となるわけではなく、地方自治法が定める範囲に限られます。
審査の申出から勧告までの流れ
審査の申出は、関与を受けた普通地方公共団体の長などが、相手方となる国の行政庁にあらかじめ通知したうえで、文書により行います。公権力の行使に当たる関与については、原則として関与の日から30日以内です。天災などやむを得ない理由がある場合は、その理由がなくなった日から1週間以内に申し出ます。
委員会は、自治事務に関する関与が違法または不当か、法定受託事務に関する関与が違法かなどを審査します。不作為については申出に理由があるか、協議については協議に係る普通地方公共団体がその義務を果たしているかを判断します。問題があると認めた場合、国の行政庁に必要な措置を講じるよう勧告し、その内容を審査申立人に通知するとともに公表します。審査や勧告は、申出から90日以内に行われます。
審査後の訴訟
審査結果や勧告などに不服がある場合、一定の要件のもとで、関与の取消しや国の不作為が違法であることの確認を高等裁判所に求められます。原則として、先に委員会へ審査を申し出なければならないため、これを審査申出前置主義といいます。提訴期間は、通知を受けた日などから原則30日以内です。
自治紛争処理委員とは
地方公共団体同士などの紛争を調停する場合
自治紛争処理委員は、普通地方公共団体相互間、または地方公共団体の機関相互間の紛争を調停します。当事者の文書による申請に基づく場合だけでなく、職権で調停に付される場合もあります。
都道府県またはその機関が当事者となるときは総務大臣、それ以外の場合は都道府県知事が委員を任命します。委員は調停案を作成して当事者に示し、受諾を勧告できます。調停案を示したときは、調停案の写しを添えて調停の経過などを報告し、その要旨を理由付きで公表します。
都道府県の関与を審査する場合
都道府県の機関が市町村などに対して行った関与に不服がある場合も、自治紛争処理委員が審査を行います。この手続は、国地方係争処理委員会による国の関与の審査とほぼ同じ仕組みです。
つまり、国が関係する関与なら国地方係争処理委員会、地方公共団体同士の紛争や都道府県の関与なら自治紛争処理委員と整理すると、両者の違いを理解しやすくなります。
