事業譲渡を行っても、譲渡会社が負っていた債務が、原則として譲受会社へ自動的に移るわけではありません。
ただし、一定の場合には、譲受会社が譲渡会社の債務を弁済する責任を負います。この記事では、事業譲渡における債務の基本的な扱いと、譲受会社が責任を負うケースを説明します。
事業譲渡では債務は原則として譲受会社に移転しない
事業譲渡とは、一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産や、得意先関係などの経済的価値のある事実関係の全部または重要な一部を、譲渡会社から譲受会社へ移すことです。
合併のように、会社の権利義務が包括的に移転する制度ではありません。そのため、譲渡対象の事業についてすでに発生している債務も、事業譲渡をしただけで譲受会社に当然承継されることはなく、原則として譲渡会社が負い続けます。
もっとも、会社法には、一定の場合に譲受会社が譲渡会社の債務について弁済責任を負う旨の規定があります。
譲受会社が債務の弁済責任を負う2つのケース
譲渡会社の商号を続けて使用する場合
譲受会社が、事業譲渡後も譲渡会社の商号を続用すると、譲渡会社の事業によって生じた債務について、譲渡会社と連帯して弁済する責任を負います(会社法22条1項)。
連帯して責任を負うとは、債権者が譲渡会社だけでなく、譲受会社にも支払いを請求できるという意味です。
債務を引き受ける旨を広告した場合
譲渡会社の商号を続用しない場合でも、譲渡会社の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡会社の債権者が譲受会社に弁済を請求できます(会社法23条1項)。
商号を続用しても譲受会社が責任を負わない場合
商号を続用する場合でも、次のいずれかに該当するときは、譲受会社は譲渡会社の債務について弁済責任を負いません(会社法22条2項)。
- 事業譲渡後、遅滞なく、譲受会社が本店所在地で、譲渡会社の債務を弁済しない旨の登記をする
- 事業譲渡後、遅滞なく、譲受会社と譲渡会社の双方が、第三者である債権者に対して、譲受会社は弁済責任を負わない旨を通知する
免責の登記は譲受会社が行い、免責の通知は譲受会社と譲渡会社の双方が行う必要があります。これらを適切な時期に実施しなければ、商号を続用した譲受会社は、譲渡会社の事業によって生じた債務について責任を負います。
まとめ
事業譲渡をしただけでは、譲渡会社の債務は原則として譲受会社に当然移転しません。ただし、譲受会社が譲渡会社の商号を続用した場合や、債務を引き受ける旨の広告をした場合には、弁済責任を負うことがあります。
商号を続用する場合は、免責の登記または、両社による債権者への免責通知を遅滞なく行うことが重要です。
