行政法は民法の特別法になる?公営住宅法や建築基準法の判例を解説

行政法は、常に民法より優先するわけではありません。ただし、行政法に属する個別の法律が、特定の法律関係について民法とは異なるルールを定めている場合、その法律は民法の特別法として扱われます。

行政法は民法の特別法になるのか

結論:個別の行政法が民法の特別法になることはある

民法は、私人間の契約や財産関係などを幅広く定める一般法です。一方、行政法は、行政機関と国民との関係などを規律する法律の総称で、一般に公法に分類されます。

しかし、法律の分類だけで適用関係が決まるわけではありません。行政法に属する法律が特定の場面について特別な定めを置いていれば、その範囲では民法に優先して適用されます。反対に、特別法に規定がない部分については、原則として民法などの一般法で補います。

公営住宅法は民法・借地借家法の特別法となる

最判昭和59年12月13日

判例は、公営住宅の使用関係について、公営住宅法とそれに基づく条例が、民法および借家法(現在の借地借家法)に優先して適用されると判断しました。

もっとも、公営住宅法や条例に特別な定めがない場合は、原則として民法や借地借家法が適用されます。また、公営住宅の契約関係を判断する際には、当事者間の信頼関係を重視する法理も適用されるとされました。

つまり、公営住宅法は民法を全面的に排除する法律ではありません。公営住宅という特別な制度に必要な部分だけ、民法とは異なるルールを定めているのです。

建築基準法は民法の相隣関係の規定に優先する

民法234条1項と建築基準法65条

民法234条1項は、建物を建築する際、原則として隣地境界線から50センチメートル以上離すことを求めています。

これに対し、建築基準法65条は、防火地域または準防火地域にある耐火構造の建築物について、外壁を隣地境界線に接して設けることを認めています。

最判平成元年9月19日

判例は、建築基準法65条の要件を満たす建築物について、民法234条1項の適用を排除する趣旨だと判断しました。したがって、一定の防火上の条件を満たす場合には、50センチメートルの距離制限より建築基準法65条が優先します。

ただし、優先関係が認められるのは、防火地域・準防火地域にあることや耐火構造であることなど、条文の要件を満たす建築物に限られます。

まとめ

行政法だから民法に常に優先するのではなく、個別の法律が特別なルールを定めている範囲で、民法に優先します。公営住宅法では、公営住宅法と条例が民法・借地借家法に優先しますが、規定のない部分では民法などが適用されます。また、建築基準法65条は、一定の耐火構造建築物について民法234条1項の距離制限を排除します。重要なのは、法律の名称ではなく、問題となる法律関係について特別な定めがあるかを確認することです。