行政行為の取消原因と無効原因とは?重大明白説をわかりやすく解説

行政行為に違法な点があっても、すべてが直ちに無効になるわけではありません。違法な行政行為には、取消原因にとどまる場合と、無効原因に当たる場合があります。両者を区別する基本的な考え方が「重大明白説」です。

行政行為の取消原因と無効原因の違い

取消原因とは

取消原因とは、行政行為に違法な瑕疵(かし)があるものの、無効と判断される場合には当たらないことをいいます。この場合、行政行為には公定力があるため、権限のある行政機関や裁判所によって取り消されるまでは、いったん有効なものとして扱われます。

違法な行政行為の違法性については、原則として取消訴訟によって判断されます。取消しがされると、原則として行政行為が成立した時点にさかのぼって効力が失われます。取消訴訟には、原則として6か月以内に提起しなければならないという出訴期間の制約があります。

無効原因とは

無効原因とは、行政行為の瑕疵が重大かつ明白な場合をいいます。無効な行政行為は、取消しを待たずに無効であることを前提として扱うことができます。

無効の場合には、行政事件訴訟法上の無効等確認の訴えを提起できるほか、行政行為が無効であることを前提として民事訴訟などを提起することもできます。無効等確認の訴えには、取消訴訟のような出訴期間の制約はありません。

項目 取消原因 無効原因
違法性 違法だが、無効とまではいえない 重大かつ明白な違法
効力 取り消されるまでは有効 無効として扱われる
主な手段 取消訴訟など 無効等確認の訴え、民事訴訟など
出訴期間 取消訴訟には原則として6か月の制約がある 無効等確認の訴えには同様の制約がない

なお、取消原因と無効原因の判断基準は法律に明文で定められているわけではなく、判例上の基準によって判断されます。

重大明白説とは

無効原因の基本基準

判例は、行政行為に内在する瑕疵が重大な法規違反をしており、かつ、その瑕疵の存在が外観上明白である場合に、行政行為は無効になると判断しています。これが、取消原因と無効原因を分ける「重大明白説」です。単に違法であるというだけで、直ちに無効になるわけではありません。

「明白」とは

「明白」とは、瑕疵の存在が外観上一見して明白であることです。この考え方を外観上一見明白説といいます。

重大明白説の例外的な考え方

明白性補充要件説

判例には、瑕疵の「重大性」のみを理由として、無効と判断するものもあります。これは、第三者の保護の必要性がないなどの要件を満たすことにより、「明白性」という要件を満たさなくても無効と認めようとする考え方です。

したがって、原則は「重大かつ明白」であり、明白性を要件としない判断は例外的な扱いです。

取消原因か無効原因かを判断する手順

  1. 行政行為に違法な瑕疵があるか確認する
  2. その瑕疵が重大な法規違反に当たるか検討する
  3. 瑕疵の存在が外観上一見して明白か確認する
  4. 明白でなくても、第三者の保護の必要性がないなどの要件があるか検討する
  5. 取消原因にとどまるか、無効原因に当たるかを判断する

まとめ

取消原因は、行政行為が違法であっても、取り消されるまでは一応有効として扱われる場合です。一方、無効原因は、原則として瑕疵が重大かつ明白で、取消しを待たずに無効として扱われる場合を指します。

行政行為の違法性を問題にするときは、単に違法かどうかだけでなく、取消原因なのか、無効原因なのかを区別することが重要です。