行政裁量とは、法律が定めた範囲内で、行政機関が個別の事案について判断する余地のことです。行政機関が何でも自由に決められるという意味ではなく、法律の趣旨や目的に従い、事実に基づいて判断しなければなりません。
行政裁量とは?法律の範囲内で行政機関が判断すること
行政裁量の意味
行政行為は、法律にその内容が定められていなければ実行に移すことができません。しかし、法律ですべての行政活動を細かく定めることは困難です。
そこで、行政機関には一定の範囲で判断の余地が認められています。これが行政裁量です。
行政裁量は行政機関の自由な判断ではない
裁量が認められていても、法律の目的と異なる理由で処分したり、重要な事実を無視したりすることはできません。裁量の範囲を超えた場合や、裁量権を濫用した場合は違法となります。
行政裁量が認められる理由と裁量の種類
行政裁量が認められる理由
行政上の問題には、個別事情を踏まえた判断が必要です。また、政策的な判断や、専門的な知識・技術を要する判断もあります。そのため、法律は一定の基準を置きつつ、具体的な判断を行政機関に委ねることがあります。
要件裁量と効果裁量
要件裁量は、法律上の要件に当てはまるかを判断する裁量です。効果裁量は、要件を満たした場合に処分をするか、どの処分を選ぶかについての裁量です。効果裁量には、処分をするかどうかを決める「決定裁量」と、複数の処分から選ぶ「選択裁量」があります。
行政裁量の有無や広さは一律ではない
裁量の範囲は、法律の文言だけでなく、法律の趣旨・目的や処分の性質から判断されます。政策的または専門技術的な判断では裁量が広く認められることがありますが、無制限に尊重されるわけではありません。
行政裁量が違法となる場合と裁判所による審査
裁量権の逸脱・濫用がある場合
行政事件訴訟法30条は、裁量処分について、裁量権の範囲を超えた場合や濫用があった場合に、裁判所が取り消せると定めています。したがって、裁量がある処分でも裁判所の審査対象になります。
違法と判断される主なケース
- 重要な事実を誤認している
- 法律の目的と異なる事情を考慮している
- 考慮すべき事情を考慮していない
- 合理的な理由なく特定の人を差別している
- 社会通念上、著しく妥当性を欠いている
裁判所は判断の結果だけでなく判断過程も審査する
裁判所は、行政機関が重要な事実を誤認していないか、考慮すべき事情を考慮しているか、考慮すべきでない事情を考慮していないかなど、判断過程に合理性があるかを審査します。
まとめ:行政裁量は「法律の範囲内で認められる判断の余地」
行政裁量とは、法律の枠内で行政機関が個別の事情に応じて判断する余地です。法律だけではすべての事案を具体的に定められないため認められますが、事実誤認、目的外の考慮、考慮不足などがあれば違法となります。裁量処分であっても、裁量権の逸脱・濫用があれば、裁判所による取消しの対象になります。
