要件裁量とは?政治的・政策的判断と専門技術的判断の具体例を解説

行政行為は、法律に内容が定められていなければ実行できません。しかし、法律ですべての行政活動を細かく規定することは困難であるため、行政機関には一定の範囲で裁量が認められています。

要件裁量とは、行政行為の法律要件に該当するかどうかについて、行政庁に認められる判断の余地です。

要件裁量とは

行政裁量には、法律要件の部分に認められる要件裁量と、法律効果の部分に認められる効果裁量があります。

効果裁量には、そもそも処分をするかどうかを決める決定裁量と、どの処分を選ぶかを決める選択裁量があります。例えば、国家公務員法82条1項は、懲戒処分をするかどうか、免職・停職・減給・戒告のいずれを選ぶかについて、行政庁の裁量を認めています。

同項3号の「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」があるかどうかの判断は、法律要件に関するものであり、要件裁量の例です。

要件裁量が認められる判断

政治的・政策的判断

政治的・政策的観点から要件裁量が認められた例として、マクリーン事件があります。

この事件では、在留期間の更新について、法務大臣が在留中の状況や在留の必要性・相当性などを審査して許否を判断する仕組みが問題となりました。更新事由が概括的に定められ、具体的な判断基準が置かれていないことから、最高裁は、更新事由の有無について法務大臣に広い裁量が認められるとしました。

また、再入国の許否についても、法務大臣の裁量権の範囲は広範なものとされています。

専門技術的判断

科学、教育、運輸などの専門知識が必要な場合にも、専門技術的観点から要件裁量が認められることがあります。

伊方原発訴訟では、原子炉施設の安全性に関する判断について、専門機関の調査審議や判断を基にした行政庁の判断に不合理な点があるかどうかという観点から、裁判所が審理・判断すべきものとされました。具体的な審査基準に不合理な点がある場合や、調査審議・判断の過程に看過し難い過誤や欠落がある場合には、処分が違法となります。

教科書検定についても、学問的な正確性、中立・公正さ、教育上の適切性などを判断する専門技術的な判断として、文部大臣に合理的な裁量が認められています。また、タクシー事業の運賃変更や免許基準への適合性についても、専門技術的な知識経験と公益上の判断が必要であり、ある程度の裁量的要素があるとされています。

さらに、生活保護基準の改定については、専門技術的かつ政策的な見地から、厚生労働大臣に裁量権が認められる場合があります。

ただし、専門分野に関係する問題であれば、常に要件裁量が認められるわけではありません。水俣病の認定については、罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であり、行政庁の裁量に委ねられる性質のものではなく、個別具体的に判断すべきものとされています。

要件裁量にも限界がある

行政事件訴訟法30条は、行政庁の裁量処分について、裁量権の範囲を超え、またはその濫用があった場合に、裁判所が処分を取り消すことができると定めています。

  • 判断の基礎となる重要な事実を誤認している
  • 法律の趣旨や目的と異なる目的で処分をしている
  • 考慮してはならない事情を考慮している
  • 本来考慮すべき事情を考慮していない
  • 判断過程や結論が社会通念上著しく妥当性を欠いている

このような事情がある場合、要件裁量に基づく判断であっても、裁量権の逸脱・濫用として違法となる可能性があります。

まとめ

要件裁量とは、法律上の要件に該当するかどうかについて、行政庁に認められる判断の余地です。政治的・政策的判断や専門技術的判断が必要な場合に認められることがありますが、裁量権の範囲を超え、または濫用した場合には、司法審査の対象となります。