裁量基準とは、行政庁が裁量権を行使するときの判断基準を、行政機関の内部で定めたものです。審査基準や処分基準と重なることがありますが、これらは同じ意味ではありません。本記事では、裁量基準の意味と法的な位置づけ、個人タクシー事件の判例を解説します。
裁量基準とは
行政庁の裁量権行使の基準
行政庁が行政行為などをする場合、一定の裁量が認められることがあります。
裁量基準は、この裁量権の行使の基準を、行政の内部で定めるものです。行政機関の内部における行動準則の一つにあたります。
裁量基準の法的な性質
裁量基準は、原則として行政機関の内部における基準であり、国民の権利義務を直接定める法規命令ではありません。そのため、国民に対する法的な拘束力や裁判規範性は認められません。
もっとも、裁量基準は公正かつ合理的に適用する必要があります。
裁量基準と審査基準・処分基準の関係
審査基準とは
審査基準とは、申請に対する処分を行う際の基準です。行政手続法5条1項は、行政庁に審査基準を定めることを義務付けています。申請に対する処分に裁量があるとき、その審査基準は裁量基準として機能します。
処分基準とは
処分基準とは、不利益処分を行う際の基準です。行政手続法12条1項は、行政庁が処分基準を定めることを努力義務として規定しています。
3つの基準の違いと重なり
- 裁量基準:行政庁の裁量権の行使に関する基準
- 審査基準:申請に対する処分を行う際の基準
- 処分基準:不利益処分を行う際の基準
つまり、裁量基準は裁量権の行使に着目した分類であり、審査基準・処分基準は行政処分の場面に着目した分類です。そのため、審査基準や処分基準が、同時に裁量基準に当たる場合があります。
裁量基準に関する判例:個人タクシー事件
事案の概要
個人タクシー事業の免許について、多数の者のうちから少数の者を選ぶ必要がありました。しかし、道路運送法6条は抽象的な免許基準を定めているにすぎなかったため、行政庁は内部的に具体的な審査基準を設けて判断していました。
最高裁の判断
最高裁は、行政庁が事実の認定について独断を疑うことが客観的にもっともと認められるような不公正な手続をとってはならないと判断しました。法律上の基準が抽象的な場合、行政庁はその趣旨を具体化した審査基準を設定し、公正かつ合理的に適用すべきです。
また、基準の内容が微妙・高度な認定を要する場合などには、基準を適用するうえで必要な事項について、申請人に主張と証拠を提出する機会を与えなければなりません。この機会を与えずに申請を却下した場合、処分の違法事由となります。
まとめ
裁量基準とは、行政庁が裁量権を行使するときの判断基準を、行政内部で定めたものです。原則として国民に対する法的な拘束力や裁判規範性はありませんが、行政庁は基準を公正かつ合理的に適用する必要があります。審査基準や処分基準は、申請に対する処分や不利益処分に関する基準であり、裁量が認められる場合には裁量基準としての役割も果たします。
