わいせつ文書の規制とは?刑法175条と判例をわかりやすく解説

わいせつ文書は、性的な内容を含むというだけで直ちに違法になるわけではありません。しかし、刑法175条は、わいせつな文書・図画・電磁的記録などを頒布する行為などを規制しています。表現の自由との関係も含め、何が「わいせつ」に当たるのかを確認しましょう。

わいせつ文書の規制と刑法175条

表現の自由がある一方で、刑法175条による規制がある

憲法21条は、思想や意見を外部に表す自由を保障しています。文書や出版物による表現も、原則としてこの保障の対象です。

一方で、刑法175条は、わいせつな文書・図画・電磁的記録などの頒布等を禁止しています。そのため、表現の自由が重要な権利であっても、わいせつ性が認められる表現は刑法上の規制対象となり得ます。

刑法175条で問題になる「わいせつ文書」とは

刑法175条の「わいせつ文書」は、単に性に関する記述がある文書を指すものではありません。判例上、次の3つの要素を備えるものとされています。

  • いたずらに性欲を興奮または刺激すること
  • 普通人の正常な性的羞恥心を害すること
  • 善良な性的道義観念に反すること

これらの要素を満たすかどうかによって、わいせつ文書に当たるかが判断されます。

わいせつに当たるかどうかの判断基準

判断は社会通念をもとに裁判所が行う

わいせつ性は、一般社会の良識、つまり社会通念を基準に、裁判所が判断します。

また、特定の表現だけを切り出すのではなく、その文書が全体としてどのような内容や構成になっているかも考慮されます。

芸術性や思想性があっても、当然に規制を免れるわけではない

芸術性・思想性とわいせつ性は、別の観点から判断されます。そのため、芸術作品や思想的な文書であることだけを理由に、わいせつ性が否定されるわけではありません。

もっとも、作品の芸術性・思想性が性的描写による刺激を減少・緩和し、処罰対象となる程度以下にわいせつ性を解消している場合は、わいせつ文書に当たらないことがあります。「芸術作品なら必ず適法」「性的描写があれば必ず違法」という単純な基準ではありません。

刑法175条に関する代表的な判例

チャタレイ事件:わいせつの定義を示した判例

『チャタレイ婦人の恋人』の翻訳者と出版社が、わいせつ物頒布等の罪に問われた事件です。最高裁は、わいせつ文書を判断する3要素を示し、わいせつ性は社会通念をもとに裁判所が判断するとしました。

「悪徳の栄え」事件:作品全体と芸術性を考慮した判断

最高裁は、芸術性や思想性のある文書でも、わいせつ性が残る場合には刑法175条の対象となり得るとしました。また、文書中の一部分は、その部分だけでなく作品全体との関係で判断するとしています。

  • 芸術性があっても、当然にわいせつ性が否定されるわけではない
  • 個々の表現ではなく、作品全体を見る
  • 表現の自由や学問の自由も、刑法175条との関係で一定の制限を受け得る

まとめ:わいせつ文書の規制を理解するポイント

  • 刑法175条は、わいせつな文書・図画・電磁的記録などの頒布等を規制している
  • わいせつ性は、性欲を刺激し、正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するかで判断される
  • 判断の基準は社会通念であり、裁判所が文書全体を見て判断する
  • 芸術性や思想性があるだけで、規制を免れるわけではない