法廷で裁判を傍聴するとき、内容を忘れないようにメモを取りたいと考える人は少なくありません。では、傍聴人が法廷でメモを取ることは、法律上自由に認められているのでしょうか。
結論として、裁判で見聞きした内容を認識・記憶するためのメモは、原則として尊重されます。ただし、裁判の公正かつ円滑な運営を妨げる場合には、制限または禁止されることがあります。この考え方を示したのが、最高裁判所のレペタ事件判決です。
レペタ事件とは
レペタ事件では、アメリカ人弁護士が法廷でメモを取る許可を求めました。しかし、メモを取ることが認められなかったため、法廷でメモを取る自由は憲法21条1項の「知る権利」に含まれるとして、国に損害賠償を求めました。
裁判で問題となったのは、傍聴人のメモが憲法上の表現の自由と関係するのか、そして裁判所がメモを一律に禁止できるのかという点です。
最高裁判所が示した法廷メモの考え方
憲法21条1項は、表現の自由を保障しています。最高裁判所は、表現する側の自由だけでなく、さまざまな意見・知識・情報に接し、それを取り入れる自由も、表現の自由の趣旨から導かれると考えました。これは一般に「知る権利」と説明されるものです。
もっとも、あらゆる筆記行為が憲法上保障されるわけではありません。情報を受け取り、理解したり記憶したりするための補助として行う筆記は、憲法21条1項の精神に照らして尊重されるとされています。
裁判は公開されているため、傍聴人は法廷で行われる手続を見聞きできます。その内容を認識・記憶するためにメモを取ることは、特段の事情がない限り、理由なく妨げてはならないと判断されました。
法廷メモの自由は無制限ではない
法廷でのメモが常に許されるという意味ではありません。メモを取る行為によって、裁判の公正かつ円滑な運営が妨げられる場合には、メモを制限・禁止できます。通常、傍聴人のメモによって裁判運営が妨げられることは多くないものの、具体的な状況によって判断されます。
事件の内容や傍聴人の状況などによっては、裁判長があらかじめメモを一般的に禁止し、状況に応じて個別に許可する取扱いをすることも、裁量の範囲内で認められます。ただし、それが理由のない妨げにならないことが必要です。
まとめ
レペタ事件が示したのは、法廷で裁判を見聞きし、その内容を認識・記憶するためにメモを取ることは、原則として尊重されるという考え方です。一方で、裁判の公正かつ円滑な運営を妨げる場合には制限されます。つまり、法廷メモは「常に自由」でも「裁判所が自由に禁止できる」ものでもなく、具体的な法廷の状況に応じて判断されます。
