1. 義務教育の「無償」とは
1-1. 憲法26条2項が定める義務教育の無償
日本国憲法26条2項は、保護者に対し、子どもに普通教育を受けさせる義務を課しています。そのうえで、「義務教育は、これを無償とする」と定めています。
ここで問題となるのは、「無償」がどこまでの費用を指すのかという点です。授業料だけでなく、教科書費や学用品など、教育に関係する費用がすべて無料になるのでしょうか。
1-2. 憲法上の「無償」は授業料を徴収しないこと
判例によると、憲法26条2項の「無償」とは、一般に義務教育について授業料を徴収しないことを意味します。
したがって、この規定だけを根拠に、教育に必要な費用がすべて無料になると考えることはできません。「無償」という言葉から受ける印象と、憲法上の意味は区別する必要があります。
2. 授業料と教科書費はどう扱われるか
2-1. 授業料
授業料を徴収しないことは、義務教育の無償に含まれます。これが、憲法26条2項が保障する「無償」の中心的な内容です。
2-2. 教科書費・学用品など
一方、教科書、学用品など、教育に必要となる費用まで、憲法上当然に無償とされるわけではありません。
授業料が無料であることと、教育に関係するすべての費用が無料であることは、別の問題です。
3. 教科書費についての判例の考え方
3-1. 教科書費国庫負担請求事件
最高裁は、教科書費国庫負担請求事件(最大判昭39・2・26)で、義務教育の「無償」は、一般に授業料を徴収しないことを意味すると判断しました。
そのうえで、教科書や学用品など、教育に必要な一切の費用まで無償とすることを、憲法26条2項が定めたものではないと示しています。
3-2. 判例から分かる結論
- 授業料:義務教育の無償に含まれる
- 教科書費:憲法上、必ず無償とされるものではない
- 学用品など:憲法上の「無償」に当然含まれるわけではない
つまり、義務教育の無償とは、教育にかかる費用がすべて無料という意味ではありません。授業料と教科書費などを分けて考えることが重要です。
まとめ
- 憲法26条2項は、義務教育を無償と定めている
- 判例上、無償の中心は授業料を徴収しないことである
- 教科書費や学用品などまで、憲法上当然に無償となるわけではない
- 義務教育の無償がどこまで及ぶかは、授業料と教科書費を区別して考える必要がある
