行政内部行為の処分性とは
処分性の意味
取消訴訟の対象となるのは、行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」です。ここでいう処分性とは、行政庁の行為によって、国民の権利義務が直接形成されたり、その範囲が確定したりする性質をいいます。
判例上、処分性を判断するときは、主に次の点が確認されます。
- 法令に基づく行為であるか
- 国民に対して行われるものか
- 国民に直接向けられているか
- 国民の権利義務を形成または確定するか
したがって、行政機関の行為であればすべて処分になるわけではありません。
行政内部行為は原則として処分性がない
通達、行政機関同士の協議、上級行政機関から下級行政機関への指示などは、基本的に行政機関の内部を拘束するための行為です。それ自体によって、国民の権利義務に直接の法律上の効果が生じるわけではありません。
そのため、行政内部行為には原則として処分性が認められません。ただし、「通達」「命令」といった名称だけで決めるのではなく、実際に国民へ直接法的効果が及ぶかを確認する必要があります。
通達に処分性はある?判例を解説
通達の基本的な位置付け
通達は行政機関の内部行為であり、通常は国民に直接向けられるものではありません。そのため、通達自体には原則として処分性が認められません。
通達の処分性を否定した判例
最高裁昭和43年12月24日判決は、通達について、行政機関内部の行為として処分性を否定しました。
職務命令など行政内部行為に処分性はある?判例を解説
職務命令の処分性
職務命令は、行政機関の職員に対して職務の遂行の在り方などを指示するものです。通常は職員を内部的に拘束するにとどまり、国民の権利義務を直接形成・確定するものではありません。
そのため、職務命令自体についても、原則として処分性は認められません。
公立学校の職務命令に関する判例
公立学校の儀式的行事における教育公務員としての職務の遂行の在り方について、校長が教職員に対して発した職務命令が問題となった事案で、最高裁平成24年2月9日判決は、処分性を否定しています。
その他の行政内部行為を否定した判例
- 消防法7条に規定する建築許可について、消防長が知事に対して行った同意(最判昭34・1・29)
- 日本鉄道建設公団が策定した成田新幹線建設工事実施計画に対する運輸大臣の認可(最判昭53・12・8)
これらも行政機関相互の関係で行われるものであり、国民の権利義務に直接法的効果を及ぼさないため、処分性が否定されました。
まとめ
処分性とは、行政機関の行為によって国民の権利義務が直接形成・確定される性質をいいます。通達や職務命令、行政機関相互の同意・認可などは、通常、行政内部を拘束するだけなので、原則として処分性がありません。
取消訴訟を提起できるかどうかは、行為の名称ではなく、国民に直接の法的効果が生じるかどうかによって判断されます。
