条例に処分性はある?保育所廃止条例が取消訴訟の対象となった判例を解説

条例は、地方公共団体が定める一般的なルールです。そのため、条例の制定行為は、原則として取消訴訟の対象になりません。

もっとも、条例の形式を取っていても、その施行によって特定の人の権利や法的地位が直接変わる場合には、例外的に処分性が認められることがあります。代表的なのが、特定の保育所を廃止する条例に関する最高裁判例です。

条例の「処分性」とは

取消訴訟は、行政庁の「処分その他公権力の行使に当たる行為」の取消しを求める訴訟です。処分性とは、問題となる行為が取消訴訟の対象となる行政処分に当たるかどうかをいいます。

判例上、処分とは、国や地方公共団体が法令に基づいて行い、その行為によって国民の権利義務を直接形成したり、その範囲を確定したりするものとされています。

条例は通常、不特定多数の人に適用される一般的・抽象的な規範です。行政庁が個人に対して行う許可や取消しのような行為とは異なるため、条例の制定行為には処分性がないのが原則です。水道料金を改定する条例や、公立小学校を廃止する条例についても、処分性は否定されています。

条例でも処分性が認められる場合

条例であっても、次のような事情があると、行政庁の処分と実質的に同じものとして扱われる可能性があります。

  • 特定の施設の廃止など、対象が限られている
  • 条例の施行だけで効果が発生し、別の行政処分を必要としない
  • 特定の人の権利や法的地位に直接影響する

つまり、「条例だから処分性がない」と一律に決まるわけではありません。条例の名称や形式ではなく、具体的な対象と法的効果が重視されます。

保育所廃止条例の処分性を認めた判例

横浜市立保育園廃止処分取消請求事件(最高裁平成21年11月26日判決)

この事件では、横浜市が特定の市立保育所を廃止する条例改正を行い、その保育所に現に入所していた児童と保護者が、条例の制定行為を取消訴訟で争いました。

最高裁は、この条例について処分性を認めました。保育所の廃止には条例が必要であり、問題の条例は特定の保育所を廃止することだけを内容としていました。そして、条例が施行されると、別の行政庁の処分を待たずに廃止の効果が生じます。

その結果、入所中の児童と保護者という限られた人々が、その保育所で保育を受けられると期待できる法的地位を直接失うことになります。この点から、条例の制定行為は行政庁の処分と実質的に同視できると判断されました。

また、取消訴訟の判決や執行停止の決定には、当事者以外にも及ぶ効力が認められています。そのため、保育所の存続をめぐる問題を取消訴訟で統一的に解決できる点にも、処分性を認める合理性があるとされました。

まとめ

条例は一般的なルールであるため、処分性を持たないのが原則です。ただし、特定の施設を対象とし、条例の施行だけで特定の人の法的地位を直接奪う場合には、例外的に処分性が認められます。保育所廃止条例は、その代表的な判例です。