行政調査で集められた資料が、後に犯則事件の調査や犯罪捜査の証拠として利用されることはあります。ただし、行政調査の名目で、実際には犯罪の証拠を集めることを目的として調査することは認められません。
重要なのは、行政調査がどのような目的で行われたのかという点です。
行政調査と犯罪捜査は目的が違う
行政調査とは
行政調査とは、行政上の決定をする際に、必要な情報の収集や分析などをする事実行為です。
行政調査には、主に次の2種類があります。
- 任意調査:調査の相手方の任意の協力により行う調査
- 強制調査:拒否した場合の罰則や実力行使が盛り込まれている調査
任意調査は法律の根拠が不要とされる一方、強制調査には法律の根拠が必要とされます。
行政調査を犯罪捜査の手段にすることはできない
行政調査は、あくまでも行政目的を達成するためのものです。そのため、犯罪の証拠資料を取得・収集・保全することを目的として、行政調査の質問や検査の権限を行使することは許されません。
もっとも、行政調査で取得・収集される証拠資料が、後に犯則事件の証拠として利用されることを想定できたとしても、そのことだけで直ちに、行政調査の権限が犯則事件の調査や犯罪捜査のために行使されたことになるわけではありません。
つまり、行政調査を犯罪捜査の手段として行うことと、行政目的で行われた調査の資料が後に捜査で利用されることは、区別して考える必要があります。
行政調査の限界
行政調査は、行政上の必要性があり、相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる必要があります。
また、任意調査であっても無制限に許されるわけではありません。職務質問に付随する所持品検査については、必要性や緊急性、侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容されます。ただし、強制にわたることは許されません。
まとめ
行政調査を、犯罪の証拠を集めるための手段として行うことはできません。一方、行政目的で行われた調査によって取得・収集された資料が、後に犯則事件の調査や犯罪捜査の証拠として利用されることはあります。その可能性が想定されていたというだけで、直ちに違法になるわけではありません。
行政調査では、行政目的と捜査目的を区別し、調査が適法な目的と相当な限度で行われたかどうかが重要です。
