行政庁には、法律だけではすべての判断方法を決められない場合に、一定の範囲で判断する権限が認められています。これが行政裁量です。
ただし、裁量があるからといって、行政庁が特定の個人を理由なく差別的に扱えるわけではありません。特定の個人に不利益を与える差別的な処分は、平等原則に反し、裁量権の逸脱・濫用として違法になる可能性があります。
行政裁量とは?認められていても無制限ではない
行政裁量の意味
行政行為は、法律にその内容が定められていなければ実行に移すことができません。しかし、法律ですべての行政活動を規定することは困難です。
そこで、法律の趣旨や目的に沿って、一定の範囲で行政庁に判断を委ねることがあります。これが行政裁量です。
裁量処分も裁判所の審査対象になる
行政事件訴訟法30条は、裁量処分について、裁量権の範囲を超えた場合や濫用があった場合には、裁判所が処分を取り消せると定めています。
つまり、行政裁量が認められていることと、どのような判断でも許されることは別です。
平等原則は行政裁量にどのような制限を加えるのか
平等原則の位置づけ
平等原則は、行政が裁量権を行使するときにも守るべき法の一般原則です。行政庁は、理由なく特定の個人を差別的に扱い、不利益を与えることはできません。
平等原則違反と裁量権の逸脱・濫用
平等原則に反する差別的な処分は、行政庁に認められた裁量の限界を超えるものとして、裁量権の逸脱・濫用に当たる可能性があります。
裁判所は、処分が裁量処分であることだけを理由に審査を拒むわけではありません。法律の趣旨や目的に反する処分でないか、特定の個人を理由なく差別的に扱っていないかが審査されます。
平等原則に違反する裁量処分はどのように審査されるのか
目的や考慮事項も確認される
裁判では、法律の趣旨や目的とは異なる動機で処分をしていないか、本来考慮すべき事情を見落としていないか、反対に考慮すべきでない事情を重視していないかが確認されます。判断の前提となる重要な事実に誤りがある場合も、裁量権の逸脱・濫用につながります。
判例に見る平等原則による限界
最高裁昭和30年6月24日判決は、食糧の供出割当について、具体的な割当方法が法律で細かく定められておらず、市町村長に一定の裁量があることを認めました。
その一方で、理由なく特定の個人を差別的に扱い、不利益を与える自由は行政庁にはないと判断しました。この判例は、行政裁量にも平等原則による限界があることを示しています。
まとめ:行政裁量があっても平等原則に反する処分は許されない
行政裁量とは、法律がすべての判断を具体的に定めていない場合に、行政庁へ認められる判断の余地です。ただし、裁量は無制限ではありません。
理由なく特定の個人を差別的に扱い、不利益を与える処分は、平等原則に違反し、行政事件訴訟法30条に基づく裁量権の逸脱・濫用として取消しの対象となり得ます。処分の目的、考慮された事情、判断の前提となる事実を確認することが重要です。
