行政代執行の手続とは?戒告・代執行令書・緊急時の対応を解説

行政代執行とは、行政上の義務を負う人がその義務を果たさない場合に、行政庁が本人に代わって実施し、または第三者に実施させる制度です。実施にかかった費用は、原則として義務者から徴収されます。

ただし、義務違反があれば常に行政代執行ができるわけではありません。行政代執行法を基本に、次の要件を満たす必要があります。

行政代執行とは?実施できる要件

行政代執行の意味

行政代執行は、行政上の義務を強制的に実現する手続の一つです。たとえば、行政庁から一定の撤去や除去を命じられたにもかかわらず、義務者が対応しない場合に、行政庁が自ら作業を行ったり、業者に依頼したりします。

行政代執行については、行政代執行法が一般的なルールを定めています。行政上の義務の履行確保については、別に法律で定めるものを除き、行政代執行法の定めるところによります。

行政代執行が認められる要件

行政代執行が認められるのは、主に次の条件を満たす場合です。

  1. 法律により直接に命じられ、または法律に基づき行政庁により命じられた行為であること。法律の委任に基づく命令・規則・条例によるものも含まれます
  2. その義務が、他人に代わって行わせることのできる作為義務であること
  3. 義務者が義務を履行していないこと
  4. 他の手段では履行を確保することが難しいこと
  5. 不履行を放置することが著しく公益に反すること

2つ目の「他人に代わって行わせることのできる作為義務」は、代替的作為義務と呼ばれます。本人でなければ実行できない義務や、何もしないことを求める不作為義務は、行政代執行の対象にはなりません。

行政代執行の手続の流れ

1.書面による戒告

行政庁は、まず相当な履行期限を定め、その期限までに義務を果たさなければ行政代執行を行う旨を、文書で通知します。これが戒告です。原則として、義務者に自主的に履行する機会を与えてから、次の手続に進みます。

2.代執行令書の送付

戒告で指定された期限を過ぎても義務が履行されない場合、行政庁は代執行令書によって義務者に通知します。代執行令書には、次の事項が記載されます。

  • 代執行を行う時期
  • 現場に派遣する執行責任者の氏名
  • 代執行に必要な費用の概算見積額

3.代執行の実施

指定された時期に、行政庁が自ら作業を行うか、第三者に実施させます。現場の執行責任者は、本人であることを示す証票を携帯し、提示を求められたときは示さなければなりません。

緊急時は戒告・代執行令書を省略できる

非常または危険切迫の状況にあり、行為を急いで実施する必要があるうえ、戒告や代執行令書の手続を行う時間的余裕がない場合には、これらを経ずに代執行を実施できます。

これは、緊急性がない場合にも通常の手続を省略できるという意味ではありません。緊急時に限られる例外です。

代執行にかかった費用は誰が負担する?

費用の納付命令

代執行後、行政庁は実際にかかった費用の額と納期日を定め、義務者に文書で納付を命じます。

費用を支払わない場合

費用が納付されない場合、国税滞納処分の例により徴収できます。督促や財産の差押え、公売・売却による換価などの手続が取られます。また、行政庁は、代執行費用について国税・地方税に次ぐ順位の先取特権を有します。

まとめ

  • 行政代執行は、代替的作為義務が履行されない場合に、行政庁などが義務者に代わって義務を実現する制度です。
  • 他の手段で履行を確保することが難しく、放置が著しく公益に反することなどが必要です。
  • 原則は、戒告、代執行令書、代執行の実施という順序です。
  • 非常・危険切迫などで緊急の必要があり、手続を行う時間がない場合は、戒告や代執行令書を省略できます。
  • 実施費用は義務者から徴収され、未納の場合は国税滞納処分の例により徴収されます。