少年が犯罪を起こした場合、実名を示していない報道であっても、本人を推知できることがあります。このような報道は、少年法との関係だけでなく、少年の名誉やプライバシーを侵害するかも問題になります。
ここでは、少年犯罪の推知報道の意味と、最高裁判所の「少年犯罪推知報道事件」(最判平成15年3月14日)を解説します。
少年犯罪の推知報道とは
推知報道の意味
推知報道とは、少年の実名を直接掲載していなくても、報道の内容から本人を推知できるような報道をいいます。
そのため、記事で仮名を使っていても、少年法が禁止する推知報道にあたる可能性があります。ただし、推知報道にあたる可能性があることと、直ちに損害賠償責任が成立することは同じではありません。
推知報道で問題になる利益
推知報道では、主に少年本人の名誉やプライバシーが問題になります。
したがって、推知報道にあたるかどうかだけでなく、報道によってどの利益が侵害されたのかを検討する必要があります。
少年犯罪推知報道事件の概要
事件の事実関係
当時18歳だったAは、殺人により起訴されていました。刑事裁判の途中、出版社Xは、Aの実名ではなく仮名を使い、法廷での様子などを雑誌に掲載しました。
Aは、少年法が禁止する推知報道にあたるとして、出版社に損害賠償を請求しました。
最高裁判所の判旨と判例のポイント
最高裁判所の判断
最高裁判所は、本件記事がAの名誉を毀損し、プライバシーを侵害する内容を含むとしても、本件記事の掲載によって不法行為が成立するかどうかは、被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無などを審理し、個別具体的に判断すべきだと判示しました。
判例から分かること
- 仮名を使っても、本人を推知できれば、少年法との関係で問題となる
- 推知報道にあたる可能性だけで、損害賠償責任が当然に成立するわけではない
- 名誉やプライバシーなど、どの利益が侵害されたかを具体的に確認する必要がある
- 被侵害利益ごとに、違法性阻却事由の有無などを個別具体的に判断する必要がある
まとめ
少年犯罪の推知報道とは、実名を出さなくても、報道内容から少年本人を推知できるような報道です。少年犯罪推知報道事件では、仮名を使用した雑誌記事について、名誉やプライバシーの侵害が問題になりました。
最高裁判所は、不法行為が成立するかどうかについて、被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無などを審理し、個別具体的に判断すべきだとしました。そのため、推知報道にあたる可能性があるというだけで、直ちに損害賠償が認められるわけではありません。
