在外邦人の選挙権はどこまで認められる?最高裁判例を解説

在外邦人とは、海外に住んでいる日本国民をいいます。かつては、在外邦人が投票できる国政選挙は、衆議院・参議院の比例代表選挙に限られていました。しかし、最高裁はこの制限を違憲と判断しています。

在外邦人の選挙権は国政選挙に広く認められる

選挙権は憲法上保障された重要な権利

憲法15条1項は、国民が公務員を選び、また罷免する権利を保障しています。国民の代表者を選挙で選ぶことは、国政に参加するための基本的な権利です。

そのため、選挙権やその行使を制限することは、原則として許されません。制限が認められるのは、選挙の公正を保ちながら投票を認めることが事実上不可能または著しく困難であるなど、やむを得ない理由がある場合に限られます。

在外邦人も衆議院・参議院の選挙で投票できる

判決を受けた法改正により、在外邦人は、衆議院・参議院の比例代表選挙だけでなく、選挙区選挙にも投票できるようになりました。つまり、海外に住んでいることだけを理由に、国政選挙で比例代表の投票だけに限定されるわけではありません。なお、ここでは国政選挙における選挙権を扱い、地方選挙については詳しく説明しません。

在外邦人選挙権訴訟で最高裁が違憲と判断した理由

事件の概要

公職選挙法の改正により、在外邦人は比例代表選挙には投票できるようになりました。一方、選挙区選挙への投票は認められていませんでした。

そこで原告らは、国会が必要な立法をしなかったため選挙区選挙に投票できなかったとして、国家賠償を求めました。最高裁大法廷は、2005年9月14日に判決を言い渡しました。

比例代表選挙に限る制度は違憲

最高裁は、在外選挙制度の対象を当分の間、衆議院・参議院の比例代表選挙に限定する規定について、憲法15条1項・3項、43条1項、44条ただし書に違反すると判断しました。

在外邦人にも、選挙区選挙を含めた投票の機会を保障すべきだと示した判決です。

判決によって在外邦人の選挙制度はどう変わったか

選挙区選挙への投票も可能になった

判決を受けて公職選挙法が改正され、在外邦人は比例代表選挙に加えて、選挙区選挙にも投票できるようになりました。

国会の立法不作為が国家賠償上違法となる場合

国会が法律を制定しないこと、つまり立法不作為が、常に国家賠償上違法となるわけではありません。ただし、憲法上の権利を違法に侵害することが明白で、必要な立法措置を取ることも明白に必要であるのに、国会が正当な理由なく長期間放置した場合などには、例外的に違法と評価されます。

まとめ

在外邦人の選挙権は、国政選挙における重要な基本的権利です。最高裁は、比例代表選挙だけに投票を限定する制度を違憲と判断しました。

判決後の法改正により、在外邦人も衆議院・参議院の比例代表選挙と選挙区選挙の双方に投票できます。