無権代理とは、代理権を持たない人が、本人の代理人として契約などをすることです。原則として、その効果は本人には及びません。ただし、本人が追認すると、契約時にさかのぼって本人に効果が帰属します。
本人が死亡して相続が始まると、相続人が追認を拒絶できるかが問題になります。判例では、誰が誰を相続したのかによって結論が異なります。
無権代理における追認拒絶の基本
無権代理行為は、本人が追認するまで本人に効力が及ばない
無権代理行為について、本人は効果を自分に帰属させる追認も、効果を受け入れない追認拒絶もできます(民法113条1項)。追認拒絶をすると、その行為の効果が本人に及ばないことが確定します。
追認・追認拒絶は相手方に対して行う
追認や追認拒絶は、無権代理人または相手方に対してすることができます。ただし、相手方に対してしなければ、原則として相手方に対抗できません(民法113条2項)。相手方が追認または追認拒絶の事実を知っている場合は、例外として対抗できます。相続が関係する場合も、まず本人の地位を誰が承継したのかを確認します。
無権代理人が本人を相続した場合の追認拒絶
無権代理人が本人を単独相続した場合
追認拒絶はできません。無権代理人が本人を単独で相続すると、本人と同じ法律上の地位に立つためです。この場合に拒絶を認めると、本人が自ら契約した場合と同様の効果を否定することになり、信義則にも反します(最判昭40・6・18、大判昭17・2・25)。
無権代理人が本人を共同相続した場合
無権代理人以外にも相続人がいる場合、無権代理人の相続分だけで契約が当然に有効になるわけではありません。共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理行為の効果は本人に当然には帰属しません(最判平5・1・21)。
本人が追認拒絶した後に、無権代理人が本人を相続した場合
本人が生前に追認拒絶をしていたときは、その時点で本人に効果が及ばないことが確定します。その後、無権代理人が本人を相続しても、相続によってこの確定した効果を覆すことはできません(最判平10・7・17)。
本人が無権代理人を相続した場合の追認拒絶
本人が無権代理人を相続した場合
本人は追認を拒絶できます。無権代理人が死亡し、本人がその地位を相続しただけでは、無権代理行為が当然に有効になるわけではありません。本人が追認拒絶をしても、信義則に反するとはいえないとされています(最判昭37・4・20)。
無権代理人の責任が残る場合
ただし、無権代理人が民法117条により、相手方に対して契約の履行または損害賠償の責任を負っていた場合は、本人は、追認を拒絶できる地位にあったことを理由として、その責任を免れることはできません。
本人とともに無権代理人を相続した者が、後に本人も相続した場合
本人と無権代理人を共同相続した者が、その後に本人を単独で相続した場合、追認拒絶はできません。本人の地位を取得した時点で、本人として拒絶する余地がなくなり、本人が自ら法律行為をしたのと同様の法律上の効果が生じます(最判昭63・3・1)。
まとめ
- 無権代理人が本人を単独相続した場合、追認拒絶はできません。
- 共同相続では、全員の共同追認がなければ当然に有効とはなりません。
- 本人が生前に追認拒絶していれば、後の相続で有効になることはありません。
- 本人が無権代理人を相続した場合、本人は追認拒絶できます。
- ただし、民法117条の責任まで当然に免れるわけではありません。
