不可分債権とは、複数の債権者が、性質上分けて実現できない1つの給付を請求する権利です。代表的なものは、1個の不動産などの引渡しを求める権利です。
不可分債権では、債権者の1人に生じた事情が他の債権者にも及ぶ「絶対効」と、原則として本人にしか及ばない「相対効」を区別する必要があります。民法428条などがそのルールを定めています。
不可分債権とは
複数の債権者が1つの給付を請求する権利
給付を分割すると、本来の目的を達成できない場合、その給付は「性質上不可分」とされます。たとえば、A所有の甲建物をBとCが共同で購入し、Aに対して甲建物の引渡しを請求する場合です。
このとき、各債権者は、他の債権者のためにも、債務者に対して給付の全部を請求できます。したがって、共同購入者の一人であるBは、単独でAに甲建物全部の引渡しを請求できます(民法428条、432条)。
債務者AがBに甲建物を引き渡せば、Cに対する引渡債務も免れます。
分割債権・連帯債権との違い
金銭のように分けて給付できるものは、特約などがなければ原則として分割債権になります。一方、連帯債権は、性質上可分である給付について、法律の規定や当事者の意思表示により、各債権者が全体を請求できるものです。
不可分債権は、給付そのものが性質上分けられない点に特徴があります。
不可分債権の絶対効とは
絶対効とは、債権者の1人について生じた事由が、他の債権者にも影響することです。不可分債権では、次の事由に絶対効があります。
- 弁済:債務者が債権者の1人に履行すると、全ての債権者の債権が消滅します。代物弁済や供託も含まれます。
- 請求:債権者の1人が請求すると、他の債権者も請求したことになります。請求による時効の完成猶予・更新なども、全ての債権者のために生じます。
- 相殺:債務者が債権者の1人に対する債権を持ち、相殺を援用すると、その相殺は他の債権者に対しても効力を生じます。
つまり、1人への弁済や1人による請求が、他の債権者にも及ぶ点が重要です。
不可分債権の相対効とは
相対効とは、ある債権者について生じた事由が、原則として他の債権者には影響しないことです。不可分債権では、弁済・請求・相殺以外の事由は、原則として相対効となります。
たとえば、債権者の1人と債務者との間で免除があっても、他の債権者の権利は消滅しません。免除を受けていない債権者は、なお給付全体の履行を請求できます。
同様に、債権者の1人と債務者との間で更改があった場合も、他の債権者の権利には原則として影響しません。
ただし、他の不可分債権者の1人と債務者が別段の合意をしたときは、その合意に従います(民法428条、435条の2ただし書)。
