期限の利益とは、借金などの支払いを期限まで待ってもらえる利益です。民法上は原則として債務者のための利益と推定されますが、契約内容によっては債権者や当事者双方のために定められることもあります。また、期限の利益は放棄できる一方、一定の事情によって失う場合もあります。
期限の利益とは、期限まで債務の履行を求められない利益
期限の利益の意味
期限の利益とは、期限が到来するまで、債務の履行を請求されない利益をいいます。たとえば、返済日が決められた借金では、その日が来るまでは、原則として債権者から返済を求められません。
ここでいう「期限」とは、将来発生することが確実な事実に、法律行為の効力や債務の履行を結び付けるものです。期限には、到来時期が決まっているものだけでなく、時期は決まっていなくても、いずれ到来することが確実なものもあります。
期限の利益と「期限」の関係
期限そのものが利益なのではなく、期限があることで、すぐに履行しなくてもよい状態が期限の利益です。期限が到来すれば、期限まで待ってもらえる利益はなくなります。
期限の利益は原則として債務者のためにある
民法上は債務者の利益と推定される
民法136条1項は、期限を債務者の利益のために定めたものと推定しています。そのため、通常の金銭債務では、債務者が期限まで返済を待ってもらえることが期限の利益です。
ただし、これはあくまで推定です。契約の内容や取引の性質から、債務者以外の利益のために定められた期限と判断されることがあります。
債権者や双方の利益になる場合もある
たとえば、無償寄託では、寄託者にとって、寄託物を期限まで預かってもらう利益があります。このように、期限が債務者だけでなく、債権者や双方の利益のために置かれることもあります。
期限の利益は放棄できるが、相手方の利益を害してはならない
期限前に履行するための放棄
期限の利益を持つ当事者は、民法136条2項本文により、その利益を放棄できます。したがって、債務者が期限前に支払うことも可能です。期限が一方の当事者だけでなく、双方の利益のために定められている場合でも、期限の利益を放棄できると解されています。
放棄によって相手方の利益を害することはできない
ただし、放棄によって相手方の利益を害することはできません。たとえば、定期預金では、預金者は期限までの利息を請求できる利益を有しています。この場合、債務者が期限の利益を放棄して期限前に弁済するときは、期限までの利息を支払わなければなりません。
期限の利益を失う場合がある
法律上、期限の利益を失う3つの場合
債務者は、民法137条により、次の場合に期限の利益を失います。
- 破産手続開始の決定を受けたとき
- 担保を滅失させ、損傷させ、または減少させたとき
- 担保を提供する義務があるのに、担保を提供しないとき
期限の利益を失うと、期限まで履行を待ってもらえる前提がなくなります。いずれも、債務者の信用や債権回収の確実性に関わる事情です。
「放棄」と「喪失」は異なる
放棄は、期限の利益を持つ者が自分の意思で手放すことです。一方、喪失は、破産や担保に関する法律上の事由が発生し、債務者が期限の利益を失うことをいいます。
まとめ
- 期限の利益とは、期限まで債務の履行を請求されない利益です。
- 原則として債務者のための利益と推定されます。
- 契約によっては、債権者や双方の利益のために定められることもあります。
- 放棄はできますが、相手方の利益を害してはなりません。
- 破産手続開始の決定や担保に関する事情によって、期限の利益を失う場合があります。
