行政行為の瑕疵の治癒とは?認められる要件と判例を解説

行政行為に瑕疵があっても、その瑕疵が軽微であり、後から必要な手続が行われた場合には、行政行為の効力が維持されることがあります。この考え方が「瑕疵の治癒」です。

もっとも、後から手続を行えば、どのような瑕疵でも治癒するわけではありません。相手方や第三者の利益、法的安定性などを考慮し、行政行為を維持することが望ましい場合に問題となります。

行政行為の瑕疵の治癒とは

瑕疵の治癒の意味

「瑕疵」とは、行政行為に存在する法律上の不備をいいます。

瑕疵の治癒とは、瑕疵がある行政行為であっても、その瑕疵が軽微なものであり、後から必要な手続などによって是正された場合に、行政行為の効力を維持する考え方です。

行政行為に瑕疵があったとしても、相手方や第三者の利益、法的安定性などを考慮すると、行政行為を取り消すよりも、瑕疵を是正して効力を維持することが望ましい場合があります。

すべての瑕疵が治癒するわけではない

瑕疵の治癒は、軽微な瑕疵を前提とする考え方です。したがって、重大な法規違反などにより行政行為が無効となる場合にまで、当然に効力を維持できるわけではありません。

また、後から行政庁が何らかの対応をした場合でも、瑕疵の治癒が認められるかどうかは、当初欠けていた手続や理由の性質などを踏まえて判断されます。

行政行為の瑕疵の治癒が認められる要件

瑕疵が軽微であること

瑕疵の治癒が認められる前提は、行政行為に不備はあるものの、その瑕疵が軽微であることです。

後から必要な手続などが行われること

行政行為の後に、当初欠けていた決定や裁決などが行われることが必要です。ただし、後から手続が行われたとしても、必ず瑕疵が治癒されるわけではありません。

行政行為を維持することが望ましいこと

相手方や第三者の利益、法的安定性などを考慮し、行政行為を取り消すよりも、瑕疵を是正して効力を維持することが望ましい場合に、瑕疵の治癒が問題となります。

瑕疵の治癒に関する判例

瑕疵の治癒を認めた判例:農地買収処分

最判昭和36年7月14日

農地買収計画について異議や訴願が提起されたにもかかわらず、これに対する決定・裁決を経ないまま、その後の手続が進められた事案です。

最高裁は、当該農地買収処分は無効となるわけではなく、事後に決定・裁決が行われた場合には、これによって農地買収計画の瑕疵が治癒されたと判断しました。

瑕疵の治癒を認めなかった判例:法人税の増額更正処分

最判昭和47年12月5日

青色申告の承認を受けた法人が確定申告をしたところ、税務署長から理由付記に不備のある増額更正処分を受けた事案です。その後、審査請求に対する裁決で、増額更正の具体的な根拠が示されました。

しかし、最高裁は、裁決によって増額更正処分の瑕疵が治癒されたことにはならないと判断しました。処分時の理由付記に不備がある場合、後の裁決で増額更正の具体的根拠が示されても、瑕疵の治癒は認められません。

このように、行政行為の瑕疵の治癒は、軽微な瑕疵について、後から必要な手続などが行われた場合に問題となります。ただし、農地買収処分のように治癒が認められる場合がある一方、法人税の増額更正処分のように、後の手続によっても治癒が認められない場合があります。