取締役の任務懈怠責任とは?会社への損害賠償責任を解説

取締役は、会社の業務を適切に行う義務を負っています。職務を怠り、その結果として会社に損害を与えた場合、会社に対して損害賠償責任を負うことがあります。この責任が任務懈怠責任です。会社法423条1項に定められており、取引先など第三者に対する責任とは区別されます。

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取締役の任務懈怠責任とは

会社法423条1項に基づく会社への損害賠償責任

取締役と会社の関係には、委任に関する規定が適用されます(会社法330条)。そのため取締役は、通常期待される注意を払って職務を行う善管注意義務を負います。また、法令・定款・株主総会の決議を守り、会社のために忠実に職務を行う義務もあります(同法355条)。これらに違反して会社に損害を生じさせると、任務懈怠責任が問題になります。

任務懈怠責任が成立するための要件

原則として、次の要件が必要です。

  1. 取締役に任務懈怠があること
  2. 会社に損害が発生していること
  3. 任務懈怠と損害との間に因果関係があること
  4. 取締役に故意または過失などの帰責事由があること

したがって、会社が損失を出したというだけで、直ちに取締役の責任が成立するわけではありません。

どのような行為が任務懈怠にあたるのか

善管注意義務・忠実義務に違反する行為

法令や定款に反する行為、株主総会の決議に従わない行為、会社のために忠実に職務を行わないことなどは、任務懈怠となる可能性があります。任務懈怠責任が成立するかどうかは、任務懈怠、会社の損害、両者の因果関係などを踏まえて判断されます。

競業取引・利益相反取引に関する義務違反

取締役が競業取引や利益相反取引をしようとする場合、重要な事実を開示し、原則として株主総会、取締役会設置会社では取締役会の承認を受けなければなりません(会社法356条1項)。競業取引とは、取締役が自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引をすることです。利益相反取引には、取締役が会社と直接取引する場合や、会社と取締役の利益が相反する間接取引があります。承認を受けず、または会社に損害を与える取引をすれば、任務懈怠責任が問題となります。

任務懈怠責任の例外と免除

会社との直接取引では無過失責任となる場合がある

取締役が会社と直接取引をした場合などは、会社法428条1項により、過失がなかったことを理由に責任を免れることができません。この場合は、通常の任務懈怠責任とは異なり、無過失責任となる点に注意が必要です。ただし、競業取引や利益相反取引のすべてが無過失責任になるわけではありません。

総株主の同意による責任免除

取締役の会社に対する損害賠償責任は、総株主の同意により免除できます(会社法424条)。

まとめ

取締役の任務懈怠責任とは、取締役が義務を怠り、会社に損害を与えたときに会社へ損害賠償をする責任です。成立には、任務懈怠、損害、因果関係、原則として故意・過失が必要です。善管注意義務・忠実義務違反や競業取引、利益相反取引が典型例ですが、会社との直接取引では無過失責任となる場合があります。