抵当権の譲渡と放棄は、どちらも抵当権者が、同一債務者に対する無担保債権者のために抵当権を処分する制度です(民法376条1項)。
ただし、配当の受け方には大きな違いがあります。譲渡では、抵当権の譲渡を受けた無担保債権者が、その抵当権を実行することができます。一方、放棄では、抵当権者と無担保債権者が、抵当権実行による配当を債権額に応じて分けます。
抵当権の譲渡と放棄の違い
抵当権の譲渡とは
抵当権の譲渡とは、抵当権者が、同一債務者に対する無担保債権者のために、抵当権を譲渡することです。譲渡を受けた無担保債権者は、その抵当権を実行することができます。
この場合、譲渡した抵当権者は、その抵当権実行による配当を受けません。なお、後順位抵当権者に対する「抵当権の順位の譲渡」とは別の制度です。
抵当権の放棄とは
抵当権の放棄とは、抵当権者が、同一債務者に対する無担保債権者のために、抵当権を放棄することです。
抵当権そのものが無担保債権者へ移るわけではありません。抵当権者と無担保債権者が、抵当権実行による配当をそれぞれの債権額に応じて分けます。そのため、放棄をした抵当権者も配当を受けます。
| 項目 | 抵当権の譲渡 | 抵当権の放棄 |
|---|---|---|
| 配当の受け方 | 無担保債権者が抵当権を実行して配当を受ける | 抵当権者と無担保債権者が按分する |
| 抵当権者の配当 | 受けない | 受ける |
| ポイント | 無担保債権者が抵当権を実行する | 抵当権実行による配当を分ける |
譲渡と放棄による配当額の計算方法
次の事例で比較します。債務者Aが所有する甲土地の価格は4,000万円、1番抵当権者Bの債権額は2,000万円、2番抵当権者Cの債権額は1,000万円、3番抵当権者Dの債権額は2,000万円、無担保債権者Eの債権額は2,000万円とします。
譲渡の場合
BがEに抵当権を譲渡すると、Eが1番抵当権を実行することができます。この場合、Bは配当を受けず、Cは1,000万円、Dは1,000万円、Eは2,000万円の配当を受けます。
| 債権者 | 配当額 |
|---|---|
| B | 配当なし |
| C | 1,000万円 |
| D | 1,000万円 |
| E | 2,000万円 |
放棄の場合
BがEに抵当権を放棄すると、1番抵当権実行による配当額をBとEが債権額の割合で按分します。BとEの債権額はいずれも2,000万円であるため、Bは1,000万円、Eは1,000万円を受けます。CとDの配当額は、それぞれ1,000万円です。
| 債権者 | 配当額 |
|---|---|
| B | 1,000万円 |
| C | 1,000万円 |
| D | 1,000万円 |
| E | 1,000万円 |
つまり、譲渡は無担保債権者が抵当権を実行して配当を受ける制度であり、放棄は抵当権者と無担保債権者が抵当権実行による配当を分ける制度です。
