転用物訴権とは?第三者への不当利得返還請求が認められる条件を解説

転用物訴権とは、契約に基づいて給付をした者が、その給付によって利益を受けた契約外の第三者に対し、不当利得の返還を求められるかという問題です。

たとえば、建物の賃借人から依頼を受けて修繕工事をした業者が、賃借人の無資力によって請負代金を回収できなくなったとします。このとき、修繕工事による利益を受けた建物所有者に対して、修理代金相当額を請求できるかが問題となります。

ただし、第三者が給付による利益を受けたというだけで、直ちに請求できるわけではありません。

転用物訴権とは

契約当事者ではない第三者への不当利得返還請求

不当利得とは、法律上の原因がないのに、他人の財産や労務によって利益を受け、その結果として他人に損失を与えた場合に、利益を受けた者が返還義務を負う制度です。

通常は、給付を受けた契約相手に対して代金などを請求します。しかし、契約上の給付が契約相手だけでなく第三者の利益にもなった場合、その第三者に不当利得返還請求ができるかが問題になります。これを転用物訴権と呼びます。

転用物訴権が問題となる典型例

典型的には、次のような関係で問題となります。

  • 給付をした者:修繕工事をした請負人
  • 契約相手:工事を依頼した建物の賃借人
  • 利益を受けた第三者:建物の所有者

契約相手が無資力となり、給付をした者が請負代金を回収できない場合に、第三者への請求が検討されます。

第三者への不当利得返還請求が認められる条件

契約相手への債権が全部または一部、無価値となっていること

まず、給付をした者が契約相手に持つ請負代金債権などが、全部または一部、価値を失っている必要があります。典型的には、契約相手が無資力で、代金を回収できない場合です。

第三者が給付による利益を受けていること

第三者が、給付をした者の財産や労務によって利益を受けていることも必要です。たとえば、修繕工事によって建物の修繕を受け、建物所有者が利益を得た場合が考えられます。

もっとも、利益を受けた事実だけで、法律上の原因がないとはいえません。

第三者が対価なしに利益を受けたこと

第三者と契約相手との賃貸借契約を全体として確認し、第三者が利益に相応する支出や負担をしていないことが必要です。

反対に、第三者が契約相手に対して利益に相応する支出や負担をしていた場合、その利益には法律上の原因があります。この場合に返還請求を認めると、第三者に二重の負担をさせることになるためです。

転用物訴権が認められるかを判断する具体例

請求が認められる可能性があるケース

建物所有者Cが建物甲をBに賃貸し、AがBとの請負契約に基づいて建物甲の修繕工事をしたとします。その後、Bが無資力となり、Aが請負代金を回収できなくなった場合です。

さらに、Cが修繕工事に対応する負担や支出をしておらず、CとBとの賃貸借契約全体から見ても、Cが対価なしに修繕工事による利益を受けたと評価できるなら、AからCへの不当利得返還請求が認められる可能性があります。

請求が認められないケース

一方、CがBに対して賃料を減額する代わりに、Bが建物甲の修繕義務を負う旨の合意がされていた場合など、Cが利益に相応する負担をしていた場合は、Cの受けた利益には法律上の原因があります。そのため、AはCに対して修理代金相当額の返還を請求できません。

重要なのは、第三者が利益を受けたかだけではありません。第三者と契約相手との関係全体を見て、対価のない利益といえるか、第三者に二重の負担を負わせることにならないかを判断します。

まとめ

転用物訴権とは、契約に基づいて給付をした者が、その給付によって利益を受けた契約外の第三者に不当利得返還請求をできるかという問題です。

請求が認められるには、主に次の点が必要です。

  • 契約相手に対する債権が、全部または一部、無価値となっていること
  • 第三者が給付による利益を受けていること
  • 第三者が、契約相手との関係全体から見て、対価なしに利益を受けていること

第三者が利益に対応する負担や支出をしていた場合は、その利益に法律上の原因があるため、返還請求は認められません。第三者への請求では、利益の有無だけでなく、対価関係と二重負担の有無が重要です。