行政事件訴訟法の教示制度とは?教示事項と対象となる訴訟を解説

行政庁から処分や裁決を受けた場合、その内容に不服があっても、どの訴訟を誰に対して、いつまでに起こせばよいのか分からないことがあります。行政事件訴訟法の教示制度は、こうした手続に必要な情報を行政庁が相手方へ知らせる制度です。

行政事件訴訟法の教示制度とは

教示制度は、行政事件訴訟法に基づく訴訟を提起するための情報を、処分や裁決の相手方に提供する仕組みです。適切な権利救済を受けられるようにすることが目的で、行政庁は一定の場合に必要事項を書面で知らせなければなりません。

教示義務が生じるのは、対象となる処分または裁決を書面で行う場合です。口頭で行う処分や裁決は、教示義務の対象外です。

教示の対象となる訴訟と教示事項

取消訴訟を提起できる処分・裁決

取消訴訟を提起できる処分または裁決を書面でする場合、行政庁は次の事項を教示します。

  1. 取消訴訟の被告とすべき者(原則として行政主体)
  2. 取消訴訟を提起できる期間(出訴期間)
  3. 法律上、審査請求を先に行う必要がある場合は、その旨

ただし、取消訴訟の対象となる処分や裁決であっても、口頭で行われる場合は、この教示義務はありません。

裁決主義が採用されている場合

法律上、処分そのものではなく、その処分についての審査請求に対する裁決に限って取消訴訟を提起できる場合があります。これを裁決主義といいます。この場合、行政庁は処分を書面でする際、法律にその定めがあることを教示します。

形式的当事者訴訟に関係する処分・裁決

当事者間の法律関係を確認または形成する処分・裁決について、法律上、その法律関係の当事者の一方を被告として訴訟を提起できる場合があります。このような訴訟に関しては、書面による処分・裁決の際に、次の事項が教示されます。

  • 訴訟の被告とすべき者
  • 訴訟の出訴期間

取消訴訟の場合と異なり、ここでの教示事項に審査請求前置主義の有無は含まれません。

教示を誤った場合はどうなるか

行政庁の誤った教示によって、原告が被告とすべき者を誤ることがあります。この場合、原告に故意または重大な過失がないときは、原告の申立てにより、裁判所が決定で被告の変更を許すことがあります。

もっとも、誤った教示があれば自動的にすべての手続上の問題が解決するわけではありません。被告を誤ったことについて、故意または重大な過失がないことなど、法律上の要件を満たす必要があります。

まとめ

行政事件訴訟法の教示制度は、行政処分や裁決を受けた人に、訴訟の被告や出訴期間などを知らせる制度です。主な対象は、取消訴訟、裁決主義が採用されている場合の処分、形式的当事者訴訟に関係する処分・裁決です。書面による場合に限られ、誤った教示で被告を誤った場合には、一定の要件のもとで被告変更が認められることがあります。