行政庁の裁量には、法律上の条件に関するものと、法律効果に関するものがあります。前者が要件裁量、後者が効果裁量です。効果裁量は、さらに決定裁量と選択裁量に分けられます。
要件裁量と効果裁量とは
行政裁量の基本的な意味
行政作用の中でも、特に行政行為は、法律にその内容が定められていなければ実行に移すことができません。
しかし、法律で行政活動の内容をすべて定めることは困難です。そのため、行政機関に一定の範囲で判断の余地が認められることがあります。これが行政裁量です。
ただし、裁量が認められても無制限ではなく、法律の趣旨や目的に沿って行使される必要があります。
要件裁量とは
要件裁量とは、行政処分を行うための法律上の要件に該当するかどうかを判断する裁量です。
政治的・政策的な観点から認められる場合や、専門技術的な判断が必要な場合があります。
効果裁量とは
効果裁量とは、法律上の要件に該当する場合に、どのような行政処分をするかについての裁量です。処分をするかどうか、処分をするとしてどの種類を選ぶかが含まれます。
要件裁量と効果裁量の違い
判断する対象が異なる
| 区分 | 裁量の対象 | 判断する内容 |
|---|---|---|
| 要件裁量 | 法律要件 | 事案が要件に該当するか |
| 効果裁量 | 法律効果 | 要件に該当した場合、どの処分をするか |
つまり、要件裁量は「処分の前提となる法律要件」に関する裁量、効果裁量は「法律効果」に関する裁量です。同じ法律の中に、両方の裁量が定められることもあります。
国家公務員法82条1項3号の例
国家公務員法82条1項は、職員に懲戒事由がある場合に、懲戒処分として免職、停職、減給または戒告の処分をすることができると定めています。
「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」があったかどうかを判断する部分が要件裁量です。一方、懲戒処分をするかどうかは決定裁量、処分をするとして免職・停職・減給・戒告のいずれを選ぶかは選択裁量です。これらは、全体として効果裁量に含まれます。
効果裁量に含まれる決定裁量と選択裁量
決定裁量とは
決定裁量とは、法律上の要件に該当しても、そもそも行政処分をするかどうかを判断する裁量です。「処分をすることができる」と定められている場合などに問題となります。
したがって、要件に該当すれば必ず処分をしなければならないとは限りません。
選択裁量とは
選択裁量とは、処分をすると決めた後、複数の処分の中から種類や程度を選ぶ裁量です。国家公務員法82条1項の免職・停職・減給・戒告のように、複数の懲戒処分から選ぶ場合が挙げられます。
決定裁量と選択裁量の関係
決定裁量は「処分をするかどうか」、選択裁量は「処分をするとして、どれを選ぶか」に関するものです。いずれも効果裁量の一種ですが、判断する段階が異なります。
裁量が認められても無制限ではない
裁量権の逸脱・濫用がある場合
行政事件訴訟法30条は、裁量処分について、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に、裁判所が取り消せると定めています。したがって、裁量が認められる処分でも、常に適法とは限りません。
判断の基礎や過程も審査される
裁判所は、重要な事実を誤認していないか、考慮すべき事情を考慮したか、考慮すべきでない事情を考慮していないかを確認します。判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠く場合も、裁量権の逸脱・濫用となり得ます。
まとめ
- 要件裁量は、事案が法律上の要件に該当するかどうかについての裁量
- 効果裁量は、法律効果についての裁量
- 決定裁量は処分をするかどうか、選択裁量はどの処分を選ぶかに関する
- いずれの裁量も無制限ではなく、逸脱・濫用があれば違法となり得る
