簡易代執行とは?通常の代執行との違いをわかりやすく解説

簡易代執行とは、通常の代執行よりも一部の要件や手続を緩和して行う代執行です。主に、代替的作為義務を命じようとしても、その相手方が不明な場合に利用されます。

ただし、行政代執行法に一般的な制度として定められているわけではありません。建築基準法など、個別の法律に規定がある場合に限って実施できます。

簡易代執行とは

通常の代執行の手続を一部緩和したもの

代執行とは、行政上の義務が履行されないときに、行政庁が自ら、または第三者にその行為を行わせる手続です。対象となるのは、他人が代わって行える代替的作為義務です。

通常の代執行には、次の要件があります。

  • 法律や条例などに基づく義務であること
  • 義務者がその義務を履行していないこと
  • 他の手段で履行を確保することが難しいこと
  • 不履行を放置することが著しく公益に反すること

通常は、義務者への戒告や代執行令書の送付などを経て、代執行を行います。簡易代執行は、これらの要件や手続の一部を、個別法によって緩和する制度です。

相手方が不明な場合に利用される

代替的作為義務があっても、その義務を負う相手方が分からない場合があります。この場合、本人に命令を出したり、戒告や代執行令書を送付したりすることができません。

そこで、個別法の定めに従い、一定の期限を設けて一定の措置を行うべき旨をあらかじめ公告します。その期限までに措置が行われなければ、行政庁は代執行を実施できます。

個別の法律による根拠が必要

簡易代執行は、行政庁が自由に選択できる一般的な制度ではありません。建築基準法9条11項・12項など、個別法に規定され、その法律が定める要件を満たす場合に限り利用できます。

通常の代執行との違い

比較項目 通常の代執行 簡易代執行
対象 代替的作為義務 代替的作為義務
相手方 原則として特定されている 不明な場合を想定
事前手続 戒告や代執行令書の送付 一定の措置と期限を公告
根拠 行政代執行法など 建築基準法などの個別法

両者はいずれも、義務者本人に代わって行政庁または第三者が行為を実施し、義務が履行された状態を実現する制度です。主な違いは、相手方への手続にあります。

通常の代執行では特定された義務者に通知しますが、簡易代執行では相手方が不明であるため、個別の通知に代えて公告を行います。したがって、簡易代執行は、どのような場合でも簡単に実施できる制度ではありません。

簡易代執行が行われる流れ

  1. 他人が代わって行える作為義務が問題となる
  2. 義務を命じる相手方が不明である
  3. 個別法に基づき、措置の内容と期限を公告する
  4. 期限までに措置が行われない
  5. 行政庁が自ら、または第三者に措置を行わせる

通常の代執行は、原則として「義務の命令」「戒告」「代執行令書」「代執行」という流れです。一方、簡易代執行は「相手方不明」「措置と期限の公告」「未実施」「代執行」と進みます。

なお、通常の代執行でも、非常または危険切迫により緊急の必要があり、戒告や代執行令書の手続を行う時間がない場合には、これらを省略できることがあります。これは簡易代執行とは別の例外です。

まとめ:簡易代執行は通常の代執行と何が違うのか

簡易代執行とは、通常の代執行に関する要件や手続の一部を、個別法によって緩和した制度です。主に、代替的作為義務について相手方が不明な場合に、本人への命令や通知に代えて、必要な措置と期限を公告して行われます。