行政裁量の逸脱・濫用とは?裁量処分が違法になる場合を解説

行政庁には、法律だけでは一律に決められない事項について、一定の範囲で判断する余地が認められています。これを行政裁量といいます。ただし、行政庁が自由に判断できるわけではありません。裁量の範囲を超えたり、法律の目的と異なる使い方をしたりすると、処分は違法となる可能性があります。

行政裁量とは?裁量処分でも裁判所の審査を受ける

行政裁量には、法律上の要件に当てはまるかを判断する要件裁量、処分をするかどうかを決める決定裁量、複数の処分から選ぶ選択裁量などがあります。決定裁量や選択裁量は、法律効果についての裁量である効果裁量に含まれます。

行政事件訴訟法30条は、裁量処分について「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合」に裁判所が取り消せると定めています。したがって、裁量がある処分でも、判断の前提や過程に不合理な点がないか審査されます。単に「不当だ」と感じる処分が直ちに違法になるわけではなく、逸脱・濫用が認められることが必要です。

行政裁量の逸脱・濫用により処分が違法となる4つのケース

1. 重要な事実を誤認している場合

裁量判断は、正しい事実関係を前提にしなければなりません。裁量判断の基礎となる重要な事実に誤認があり、判断が事実の基礎を欠いている場合には、裁量権の逸脱・濫用となり得ます。

2. 法律の目的と異なる目的で処分をした場合

行政庁は、法律の趣旨・目的に沿って権限を使う必要があります。児童のための施設の認可制度を、近隣の個室付浴場の営業を妨害する目的で利用した事例では、最高裁が行政権の濫用に当たると判断しました。

3. 平等原則などに反する場合

裁量があっても、合理的な理由なく特定の人だけを不利益に扱うことは許されません。行政庁が理由なく特定の個人を差別的に扱った場合、平等原則など法の一般原則に反し、裁量の限界を超える可能性があります。

4. 考慮すべき事情を考慮しなかった場合

裁判所は結論だけでなく、判断の過程も確認します。本来重視すべき事情を軽視したり、考慮すべき事項を考慮しなかったり、考慮すべきでない事項を考慮した場合には、裁量権の逸脱・濫用となることがあります。日光太郎杉事件では重要な価値を軽視したことが、エホバの証人退学処分事件では代替措置などを検討しなかったことが問題となりました。

裁量処分が違法かどうかの判断ポイント

裁判所は、裁量の範囲、重要な事実の誤認、法律の目的に反する動機、平等原則違反、考慮事項の選び方や評価に不合理がないかを確認します。その結果、重要な事実の基礎を欠き、または社会通念上著しく妥当性を欠く場合に、逸脱・濫用として違法と判断されます。

在留期間の更新や原子炉設置の安全性のように、専門的・政策的判断を伴う分野では、行政庁の裁量が広く認められることがあります。ただし、その場合でも、審査基準に不合理な点がある場合や、判断過程に看過し難い過誤・欠落がある場合には、違法となる余地があります。