執行罰とは?過料によって行政上の義務履行を促す仕組みを解説

執行罰とは、行政上の義務を履行しない者に対して、過料を科すことを予告し、心理的な圧力によって義務の履行を促す仕組みです。過去の違反を処罰することが目的ではなく、これから義務を履行させるための手段である点に特徴があります。

なお、執行罰で問題となる「過料」は、刑事罰である「罰金」とは性質が異なります。

執行罰とは

行政上の義務の履行を間接的に促す制度

行政上の義務を負う者が、期限までに必要な措置を取らないとします。この場合、行政庁が「履行しなければ過料を科す」と予告し、過料を避けたいという心理を利用して、義務の実行を促すのが執行罰です。

執行罰は、行政庁が義務者に代わって行為をする制度ではありません。あくまで、義務者自身に履行させるための間接的な強制手段です。

行政上の強制執行における位置付け

行政上の強制執行には、代執行、直接強制、執行罰、行政上の強制徴収があります。代執行が行政庁や第三者によって義務者に代わる行為をする制度であるのに対し、執行罰は過料によって義務の履行を促します。

執行罰によって義務履行が促される仕組み

過料を予告して履行を促す

まず、行政上の義務が履行されていない状態が必要です。そのうえで、法律上の根拠に基づき、行政庁が不履行の場合の過料を予告します。義務者が予告を受けて義務を履行すれば、制度の目的は達成されます。

義務が履行されるまで複数回科すことができる

執行罰は、過去の違反に対する制裁ではなく、義務の履行を確保するためのものです。そのため、義務が履行されるまで、複数回にわたり科すことが可能です。刑事罰である罰金とは目的が異なるため、二重処罰の禁止には当たりません。

執行罰を行うための条件と実際の制度

法律上の根拠が必要

執行罰は、法律に定めがある場合に限って行えます。行政代執行法が、行政庁に一般的な執行罰の権限を与えているわけではありません。また、条例だけを根拠として執行罰を科すこともできません。

法律上の個別の規定

執行罰を定める規定として、砂防法36条があります。同条は、500円以下で指定した金額の過料を科す仕組みを定めています。このように、執行罰は一般的に幅広く利用できる制度ではなく、法律に個別の規定がある場面に限られます。

執行罰と行政罰の違い

執行罰は、将来の義務履行を実現するための手段です。これに対して行政罰は、すでに行われた義務違反を理由として制裁を科すものです。したがって、同じ義務違反について、将来の履行を促す執行罰と、過去の違反に対する行政罰を併科することが可能です。

執行罰の過料は罰金ではなく、過料を科すこと自体が最終目的でもありません。過料を避けるよう義務者に促し、行政上の義務を履行させることが制度の目的です。

まとめ

  • 執行罰とは、過料を予告して行政上の義務履行を促す制度です。
  • 行政庁が直接義務を実現するのではなく、間接的に履行を促します。
  • 義務が履行されるまで、複数回科すことが可能です。
  • 法律上の根拠が必要で、条例だけを根拠に科すことはできません。
  • 過去の違反を処罰する行政罰や、刑事罰である罰金とは目的が異なります。