行政裁量における事実誤認とは?裁量処分が違法になるケースを解説

行政庁には、法律で定められた一定の範囲内で、処分をするかどうかや、どの処分を選ぶかを判断する余地が認められることがあります。これが行政裁量です。

もっとも、裁量があるからといって、行政庁の判断が常に適法になるわけではありません。判断の基礎とされた重要な事実に誤認があり、処分の基礎を欠く場合、その処分は裁量権の範囲を超え、またはその濫用として違法になる可能性があります。

行政裁量と裁量処分が違法になる基準

行政裁量とは

法律ですべての行政活動を細かく定めることは難しいため、行政庁に一定の判断を委ねる場合があります。特に、政策的な判断や専門的・技術的な評価が必要な分野では、裁量が認められることがあります。

たとえば、処分を行うかどうか、複数の処分のうちどれを選ぶかといった点について、行政庁が判断することがあります。

裁量があっても違法になる場合

行政事件訴訟法30条は、裁量処分について、裁量権の範囲をこえ、又はその濫用があった場合に裁判所が取り消せると定めています。

裁量は行政庁の自由な判断を無制限に認めるものではありません。裁判所は、処分の結論だけでなく、その判断の基礎となった事実や判断の過程に不合理な点がないかも審査します。

行政裁量における事実誤認とは

事実誤認の意味

事実誤認とは、裁量判断の前提となる事実を正しく認定していないことです。特に、判断の基礎とされた重要な事実に誤認があり、その結果、判断が事実の基礎を欠く場合には、裁量権の逸脱・濫用が認められる可能性があります。

違法と判断されるポイント

  • 誤認された事実が、処分の判断の基礎となる重要な事情か
  • その誤認により、処分の判断が事実の基礎を欠くものとなっているか
  • 誤認の結果、裁量権の範囲を超え、またはその濫用に当たるか

したがって、事実に小さな誤りがあるだけで、直ちに処分が違法となるわけではありません。重要な事実の誤認により、裁量判断の基礎が失われていることが必要です。

事実誤認以外に裁量処分が違法となる判断過程

考慮すべき事情を考慮していない場合

事実を正しく把握していても、本来重視すべき事情を検討していなければ、判断過程に問題があるとして違法となる可能性があります。

考慮してはならない事情を重視した場合

法律の趣旨・目的と関係のない事情を主な理由にしたり、本来の制度目的とは異なる目的を実現するために処分したりすることも許されません。これは目的拘束違反や他事考慮と呼ばれ、裁量権の濫用となり得ます。

法の一般原則に反する場合

合理的な理由なく特定の人だけを不利益に扱うなど、平等原則に反する処分も許されません。事実誤認は裁量処分が違法となる理由の一つであり、考慮の欠落や不適切な目的など、ほかの違法事由もあります。

まとめ

行政裁量とは、法律により行政庁に認められた一定の判断の余地です。しかし、判断の基礎とされた重要な事実を誤認し、その結果、判断が事実の基礎を欠く場合は、裁量権の逸脱・濫用として処分が取り消される可能性があります。

また、考慮すべき事情を検討していない場合や、関係のない事情を重視した場合も、判断過程の不合理として違法となり得ます。