行政庁から許可の取消しや営業停止などの不利益処分を受ける場合、処分を決める前に、処分の名あて人となるべき者が意見を述べる機会が設けられることがあります。その一つが聴聞手続です。
聴聞では、行政庁が予定している処分の内容や原因を示し、当事者や参加人が意見や証拠書類等を提出します。ここでは、通知から処分決定までの流れを説明します。
聴聞手続とは
不利益処分をする前に意見を述べる手続
聴聞手続とは、行政庁が不利益処分を行う前に、処分の名あて人となるべき者へ意見を述べる機会を与える手続です。手続は、行政庁が指名した職員などである主宰者のもとで行われます。
主宰者は、当事者や参加人に質問したり、意見の陳述や証拠書類等の提出を促したりします。聴聞の終結後、主宰者が作成した聴聞調書と報告書を参酌して、行政庁が不利益処分を決定します。
聴聞手続に関わる者
- 当事者:聴聞の通知を受けた、または公示送達により通知が到達したものとみなされる不利益処分の名あて人となるべき者
- 主宰者:聴聞の進行を担当する者
- 参加人:当事者以外で、不利益処分の根拠となる法令に照らして利害関係を有すると認められ、聴聞手続への参加を許可された関係人
主宰者は中立性が必要なため、当事者や参加人本人、その配偶者、4親等内の親族、同居の親族など、一定の利害関係を持つ者は務められません。
聴聞の通知から期日までの流れ
行政庁から聴聞の通知が届く
行政庁は、聴聞期日までに相当な期間を置き、書面で通知しなければなりません。通知書には、予定される不利益処分の内容、根拠となる法令の条項、原因となる事実、期日・場所、聴聞に関する事務を所掌する組織の名称・所在地が記載されます。
さらに、期日に出頭して意見や証拠書類等を提出できること、出頭に代えて陳述書や証拠書類等を提出できること、聴聞が終結するまで原因事実を証する資料の閲覧を求められることも教示されます。
関係人の参加
主宰者は、必要があると認めるときは、利害関係を有する関係人に参加を求めることができます。また、関係人が自主的に参加する場合には、主宰者の許可が必要です。関係人が手続に参加すると、参加人と呼ばれます。
代理人の選任と資料の閲覧
当事者と参加人は、行政庁や主宰者の許可なく代理人を選任できます。代理人は、本人のために聴聞に関する一切の行為を行えます。代理人の資格は書面で証明する必要があり、代理人が資格を失ったときは、その旨を行政庁に書面で届け出なければなりません。
また、当事者と、不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人は、通知を受けた時から聴聞の終結まで、調査結果の調書や原因事実を証する資料の閲覧を求められます。第三者の利益を害するおそれがある場合など正当な理由がある場合を除き、行政庁は閲覧を拒めません。閲覧日時や場所は行政庁が指定できます。
所在が分からない場合
当事者の所在が判明しないときは、通知事項を記載した書面を行政庁の事務所の掲示場に掲示する方法によって通知できます。掲示を始めた日から2週間が経過すると、通知が届いたものと扱われます。
聴聞期日の審理と意見を述べる方法
聴聞期日における審理
最初の期日では、行政庁の職員が処分の内容、根拠となる法令の条項、原因となる事実を説明します。当事者や参加人は、意見や証拠書類・証拠物を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員へ質問できます。補佐人とともに出頭する場合も、主宰者の許可が必要です。
当事者や参加人の一部が出頭しない場合でも、審理は進められることがあります。出頭に代えて意見を述べるときは、期日までに陳述書と証拠書類等を提出します。聴聞は原則非公開で、行政庁が相当と認めた場合に限り公開されます。
聴聞の続行と終結
審理の結果、なお聴聞を続行する必要があるときは、主宰者は新たな期日を定めます。出頭した当事者や参加人にはその場で告知できますが、それ以外の場合には、期日と場所を書面で通知しなければなりません。
一方、当事者の全部または一部が正当な理由なく出頭せず、出頭に代わる陳述書なども提出しない場合や、参加人の全部または一部が出頭しない場合には、改めて意見を述べたり証拠書類等を提出したりする機会を与えずに終結できることがあります。
また、当事者に正当な理由があり、出頭できる見込みが相当期間引き続きない場合には、期限を定めて陳述書や証拠書類等の提出を求め、その期限が到来したときに終結することもできます。
聴聞の再開
聴聞終了後に新たな証拠書類等が発見されるなど、必要があると認められるときは、行政庁が主宰者に報告書を戻して、聴聞の再開を命じることができます。
聴聞調書・報告書の作成と処分の決定
主宰者は、審理が行われた各期日ごとに、聴聞の審理の経過と陳述の要旨を記載した聴聞調書を作成します。聴聞終結後には、当事者等の主張に理由があるかどうかについて意見を記載した報告書を作成し、聴聞調書とともに行政庁へ提出します。
当事者や参加人は、聴聞調書と報告書の閲覧を求められます。行政庁は、不利益処分を決定する際、聴聞調書の内容と報告書の意見を十分に参酌しなければなりません。
聴聞手続に関する審査請求
聴聞手続の規定に基づいてした処分や不作為については、審査請求をすることができません。ただし、聴聞手続を経た不利益処分については、審査請求ができます。
