地方公共団体の契約に民法の双方代理禁止が適用される場合とは?

地方公共団体の契約であっても、私人間における双方代理行為と同様に、地方公共団体の利益が害されるおそれがある場合には、民法108条の規定が類推適用されることがあります。

特に、地方公共団体の長が地方公共団体を代表する一方で、契約相手である法人の代表者や代理人も務めている場合には、地方公共団体の利益が害されるおそれが問題になります。

地方公共団体の契約にも民法108条が類推適用されることがある

民法108条の双方代理禁止とは

双方代理とは、同じ法律行為について、1人の者が当事者双方の代理人となることです。民法108条は、原則としてこのような行為を禁止しています。

地方公共団体が関係する契約でも、私人間における双方代理行為と同様に、地方公共団体の利益が害されるおそれがある場合には、この規定が類推適用されることがあります。

地方公共団体の契約に類推適用される理由

地方公共団体の長が、地方公共団体を代表して契約を結ぶだけなら、直ちに双方代理の問題になるわけではありません。しかし、その長が契約相手の法人も代表・代理していると、同じ人物が契約の両側に立つことになります。

そのため、民法108条がそのまま直接適用されるというより、私人間における双方代理行為と同様に地方公共団体の利益が害されるおそれがある場合に、民法108条の規定が類推適用されます。

民法108条が類推適用される場合の判断ポイント

地方公共団体の長が双方を代表・代理していること

判断の第一のポイントは、地方公共団体の長が一方で地方公共団体を代表し、他方で契約相手の法人なども代表または代理しているかどうかです。単に地方公共団体が契約当事者であるだけでは、双方代理禁止が適用されるとは限りません。

地方公共団体の利益が害されるおそれがあること

重要なのは、形式的に代表者が同一かどうかだけではなく、その契約によって地方公共団体の利益が害されるおそれがあるかです。

市長が市を代表すると同時に、契約相手である法人を代表または代理している場合には、地方公共団体の利益が害されるおそれがあるかどうかが問題になります。

議会が追認した場合の契約の扱い

最高裁は、地方公共団体の長によるこのような双方代理行為について、民法108条を類推適用できるとしています。

ただし、議会がその行為を追認した場合には、民法116条の無権代理行為の追認に関する規定も類推適用されます。追認とは、問題のある行為を後から認めることです。

この場合、議会の意思に沿って、契約の法律効果が本人である地方公共団体に帰属します。

判例:最高裁平成16年7月13日判決

この判決は、普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して契約を締結する場合について、長が契約相手を代表・代理することにより、普通地方公共団体の利益が害されるおそれがあるときは、民法108条を類推適用できると判断したものです。

一方、議会がその行為を追認したときは、民法116条の類推適用により、議会の意思に沿って、契約の法律効果が本人である普通地方公共団体に帰属するとしました。

まとめ

  • 地方公共団体の契約にも、民法108条の双方代理禁止が類推適用されることがある
  • 地方公共団体の長が地方公共団体と契約相手の双方を代表・代理し、地方公共団体の利益が害されるおそれがあることがポイントである
  • 議会が双方代理行為を追認した場合は、民法116条の類推適用により、議会の意思に沿って契約の法律効果が地方公共団体に帰属する