税務署から税務調査を受ける場合、調査前に通知があるのか、なぜ調査するのかを説明してもらえるのか、気になる方も多いでしょう。結論として、税務調査の事前通知や調査理由の告知は、常に必要となる法律上の一律要件ではありません。ただし、税務調査には客観的な必要性が求められ、実施方法にも限界があります。ここでは、税務調査と行政調査の関係、事前手続の考え方を解説します。
税務調査の事前通知や調査理由の告知は一律に必要ではない
事前通知や調査理由の告知は法律上の一律要件ではない
税務調査に先立つ通知や告知については、個別の法律に手続が定められている場合があります。しかし、税務調査を行う際に、必ず事前通知をしなければならないわけではありません。
また、調査の理由や必要性を、調査対象者に対して個別かつ具体的に説明することも、すべての税務調査に共通する法律上の条件とはされていません。こうした事前手続が、憲法上当然に要求されるものでもありません。
事前通知がないことだけで税務調査が違法になるわけではない
そのため、通知がなかったことや、調査理由の説明を受けていないことだけを理由に、直ちに税務調査が違法になるわけではありません。適法性は、調査を行う必要性があったか、調査の方法が相当であったかなどを含めて判断されます。
税務調査は行政調査の一種
行政調査とは
行政調査とは、行政上の判断や決定に必要な情報を集め、分析するための調査です。税務調査も、行政上の目的を達成するために必要な情報を確認するものなので、行政調査に当たります。
任意調査と強制調査
行政調査には、相手方の任意の協力を前提とする任意調査と、拒否した場合の罰則や実力行使を伴う強制調査があります。任意調査は法律上の根拠を必要としない一方、強制調査には法律上の根拠が必要です。
税務調査で行われる質問や帳簿書類の検査についても、税法に基づく税務職員の調査権限との関係が問題となります。
税務調査を行うために必要な条件と実施上の限界
調査には客観的な必要性が必要
事前通知が不要な場合があるからといって、税務署が理由なく調査できるわけではありません。調査の目的や確認事項、申告内容、帳簿の保存状況、事業の形態など、具体的な事情を踏まえて、客観的な必要性があることが求められます。
調査の範囲・時期・場所は社会通念上相当な限度にとどまる必要がある
調査の範囲、程度、時期、場所について細かな法律上の定めがない場合でも、無制限に調査できるわけではありません。調査の必要性と、調査を受ける側の私的利益を比較し、社会通念上相当な範囲で実施される必要があります。具体的な方法は、権限のある税務職員の合理的な判断に委ねられます。
判例が示した税務調査の事前手続
荒川民商事件の判断
最高裁は、税務調査について、実施日時や場所の事前通知、調査理由や必要性の個別具体的な告知は、法律上の一律の要件ではないと判断しました。また、確定申告期間が終わる前であっても、税務調査が法律上直ちに禁止されるわけではないとしています。
この判例からは、事前通知の有無だけでなく、調査に客観的な必要性があったか、調査方法が相当な範囲に収まっていたかが重要だと分かります。
事前通知がある場合とない場合の考え方
事前通知については、個別の法令に手続が定められている場合があります。通知がない場合でも、調査の必要性や範囲、時期、場所などが適法な限度に収まっているかが問題となります。必要性を欠いていたり、私的利益との関係で社会通念上相当な限度を超えていたりする場合には、通知の有無とは別に、調査の適法性が問題となります。
まとめ
- 税務調査の事前通知や調査理由の告知は、常に必要な一律要件ではありません。
- 個別の法令に通知手続が定められている場合は、別途その規定を確認する必要があります。
- 税務調査には客観的な必要性が求められ、調査の範囲・時期・場所も社会通念上相当な限度にとどまらなければなりません。
- 事前通知の有無だけでなく、調査全体の必要性と実施方法が問題となります。
