行政罰は併科できる?行政刑罰・過料・強制執行の関係を解説

行政上の義務に違反した場合、行政罰は一つだけ科されるのでしょうか。結論として、行政刑罰と過料は併科でき、行政罰と行政上の強制執行も併用できると解されています。ただし、それぞれの目的や手続が異なるため、制度を分けて考える必要があります。

行政罰とは?行政刑罰と過料の違い

行政罰の基本的な意味

行政罰とは、行政上の義務を果たさなかった場合に、その違反に対する制裁として科されるものです。大きく分けると、刑罰として科される行政刑罰と、行政上の秩序罰である過料があります。

行政刑罰とは

行政刑罰は、拘禁刑、罰金、拘留、科料など、刑法に定められた刑名を用いる制裁です。原則として刑法総則が適用され、裁判所が刑事訴訟法に定められた手続で科します。

ここで注意が必要なのは、「科料」と「過料」は別の制度だという点です。科料は刑罰ですが、過料は刑罰ではありません。

過料とは

過料は、比較的軽微な行政法規違反に対して科される金銭的制裁で、行政上の秩序罰にあたります。国の法律違反については、非訟事件手続法に基づき、地方裁判所で科されます。条例・規則違反については、地方自治法に基づき、普通地方公共団体の長が科します。

行政刑罰と過料は併科できる?

併科できるとされている

行政刑罰と過料は、どちらも行政上の義務違反に関係する制裁です。しかし、目的、要件、制裁を実現する手段が異なります。そのため、同じ義務違反について行政刑罰と過料を併科できるとするのが判例です。

二重処罰の禁止との関係

憲法39条は、同じ行為について二重に刑罰を科すことを禁止しています。ただし、行政刑罰と過料は、性質や目的、手続が異なります。そのため、両者を併科しても、憲法39条の二重処罰の禁止に反しないとされています。

行政罰と行政上の強制執行は併用できる?

行政上の強制執行との違い

行政罰は、義務違反に対して制裁を加える制度です。一方、行政上の強制執行は、義務の履行を強制することを目的とします。行政罰が「違反への制裁」であるのに対し、強制執行は「義務を実現するための手段」です。

同じ義務違反について併用できる

目的が異なるため、同じ義務違反について行政罰と行政上の強制執行を併用することは可能と解されています。行政上の強制執行は刑罰ではないため、行政罰と併用しても、憲法39条の二重処罰の禁止には違反しません。

まとめ:行政罰は目的や性質が異なれば併科・併用できる

  • 行政罰には、行政刑罰と過料がある
  • 刑罰である「科料」と、刑罰ではない「過料」は別物である
  • 行政刑罰と過料は、目的や手続が異なるため併科できるとされている
  • 行政罰と行政上の強制執行も、制裁と義務履行という目的が異なるため併用できる

行政罰を併科できるか判断する際は、それぞれの目的、要件、手続などの性質を確認することが重要です。