行政指導は、行政機関が国民や事業者に対し、一定の対応を求める行為です。ただし、行政処分のように一方的に義務を課したり、権利を制限したりするものではありません。
行政指導の限界を判断するうえで重要なのは、任意の協力を前提としているか、そして従わないことを理由に不利益な扱いをしていないかという点です。
行政指導とは?行政機関が任意の協力を求める行為
行政指導とは、行政機関がその任務や所掌事務の範囲内で、行政目的を実現するために行う指導や要請です。
行政指導に携わる者は、行政機関の任務や所掌事務の範囲を超えてはなりません。また、行政指導の内容は、あくまでも相手方の任意の協力によって実現されるものでなければなりません。
行政指導の主な限界は「任意性」と「不利益取扱いの禁止」
任意の協力を妨げる強制はできない
行政指導は、相手方の任意の協力によって実現するものです。行政行為(処分)のように、相手方に義務を課したり、その権利を制限したりするものではありません。
行政指導に従うことを余儀なくさせるなど、任意の協力を損なうような運用は、行政指導の限界を超えるおそれがあります。
従わないことを理由とする不利益取扱いは禁止
行政指導に従わなかったことを理由に、不利益な取扱いをすることは禁止されています。
行政指導を行う際は、少なくとも趣旨・内容・責任者を明確に示さなければなりません。口頭で受けた場合でも、相手方がこれらの事項を記載した書面の交付を求めれば、行政上特別の支障がない限り、書面を交付する必要があります。ただし、その場で完了する行為を求める場合や、すでに文書または電磁的記録で同じ事項が通知されている場合は、改めて書面を交付する必要はありません。
申請や許認可に関係する行政指導には、さらに限界がある
申請の取下げや変更を求め続けてはならない
申請の取下げや内容の変更を求める行政指導について、申請者が従う意思がないと表明したにもかかわらず継続し、申請者の権利の行使を妨げることはできません。
行政指導を理由に処分を留保することは原則として許されない
判例では、建築主が行政指導に応じない意思を明確にした場合、特段の事情がない限り、行政指導が行われていることを理由に建築確認処分を留保することは違法とされています。
もっとも、行政指導への不協力が社会通念上、正義の観念に反するような特段の事情がある場合は、例外的に結論が異なる可能性があります。
許認可権限を背景にした圧力は許されない
許認可等をする権限または許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、その権限を行使できない場合や、行使する意思がない場合に、権限を行使できる旨を殊更に示して相手方に行政指導に従うことを余儀なくさせることは禁止されています。
行政指導をする際に、行政機関が許認可等の権限を行使し得る旨を示すときは、根拠となる法令の条項、その条項に規定する要件、要件に適合する理由を示す必要があります。
行政指導が限界を超えているか判断するポイント
- 行政指導への協力を断った場合に、不利益な取扱いを受けることを示されていないか
- 行政指導によって、相手方に義務を課したり権利を制限したりしていないか
- 行政指導の趣旨、内容、責任者が明確に示されているか
- 申請の取下げや変更を断った後も、行政指導が継続していないか
行政指導は、任意の協力を求める制度です。行政機関の権限を背景に実質的な強制や不利益な扱いが行われている場合、行政指導の限界を超えている可能性があります。
