支配人は、商人や会社の営業・事業を任される立場です。そのため、商人や会社の許可がなければ、一定の行為をしてはなりません。なかでも、商人・会社の営業の部類に属する取引をすることを制限するのが競業避止義務です。一方、競業に当たるかどうかを問わず、支配人の活動が分散することを防ぐ義務を精力分散防止義務といいます。
支配人の競業避止義務とは
支配人に課される義務の根拠
個人商人の支配人には商法23条1項、会社の支配人には会社法12条1項が適用されます。これらの規定により、支配人は商人・会社の許可がなければ、次のような行為をすることができません。
競業避止義務にあたる行為
競業避止義務とは、自己または第三者のために、商人・会社の営業・事業の部類に属する取引をすることを禁止するものです。
競業取引は、自己のために行う場合だけでなく、第三者のために行う場合も競業避止義務の対象です。もっとも、商人・会社の許可を得ていれば、この制限には抵触しません。
精力分散防止義務との違い
精力分散防止義務にあたる行為
競業避止義務以外に、許可なく禁止される行為は次のとおりです。
- 商人・会社と同種の営業に限らず、自ら営業を行うこと
- 他の商人、会社または外国会社の使用人になること
- 他の会社の取締役、執行役または業務執行社員になること
| 区分 | 対象となる行為 |
|---|---|
| 競業避止義務 | 商人・会社の営業・事業の部類に属する取引を、自己または第三者のために行うこと |
| 精力分散防止義務 | 自ら営業すること、他の商人・会社・外国会社の使用人になること、他の会社の取締役・執行役・業務執行社員になること |
つまり、競業避止義務は、商人・会社の営業・事業の部類に属する取引をすることを制限する義務です。これに対し、精力分散防止義務は、競業に当たるかどうかを問わず、自ら営業を行うことや、他の商人・会社・外国会社の使用人になることなどを制限します。そのため、自ら行う営業が商人・会社と同種でなくても、精力分散防止義務の対象となります。
競業避止義務に違反した場合の効果
競業取引そのものは有効
支配人が許可なく競業取引をしても、取引の相手方を保護するため、その取引自体は有効です。
支配人が負う責任
一方、支配人は商人・会社に対して、債務不履行に基づく損害賠償責任を負います。また、その競業取引によって支配人または第三者が得た利益の額は、商人・会社に生じた損害額と推定されます(商法23条2項、会社法12条2項)。この効果は、競業避止義務違反についてのものです。
まとめ
- 商人・会社の営業・事業の部類に属する取引を自己または第三者のために行うことが競業避止義務の対象です。
- 自ら営業すること、他の商人・会社・外国会社の使用人になること、他の会社の取締役・執行役・業務執行社員になることは精力分散防止義務の対象です。
- 無許可の競業取引も相手方との関係では有効ですが、支配人は商人・会社に損害賠償責任を負います。
