株式会社を設立する際、定款に会社の財産や設立費用などに関する特別な事項を定めると、原則として検査役による調査が必要です。ただし、現物出資や財産引受けに関する財産の額が少ない場合や、専門家の証明を受けている場合などは、調査を省略できます。
この記事では、株式会社設立で検査役の調査が必要になるケースと、不要になる3つのケースを解説します。
株式会社設立で検査役の調査が必要になるのはどのような場合か
定款に「変態設立事項」を定めた場合が原則
株式会社の設立時に、定款へ次の変態設立事項を記載した場合、原則として検査役の調査が必要です。変態設立事項とは、その評価を誤ると会社の財産的基礎を危うくするおそれがある特別な定めをいいます。
- 現物出資
- 財産引受け
- 発起人が受ける特別の利益
- 設立費用
現物出資とは、金銭ではなく不動産や有価証券などを出資することです。財産引受けは、会社の成立後に会社が特定の財産を譲り受けることを、設立時に約束するものです。
これらは、実際の価値よりも高い金額を定めると、会社の財産的基礎が損なわれるおそれがあります。そのため、発起人は裁判所に検査役の選任を申し立て、調査を受けなければなりません(会社法33条1項)。
調査の対象となる「現物出資財産等」
検査役による調査の省略に関係する「現物出資財産等」とは、変態設立事項のうち、次の財産を指します。
- 現物出資の目的となる財産
- 財産引受けの目的となる財産
検査役は、これらの財産について、定款に記載された価額が相当かどうかを調査します。
検査役の調査が不要になる3つのケース
現物出資財産等については、次のいずれかに該当すれば、検査役の調査を省略できます(会社法33条10項)。これらの例外は、現物出資や財産引受けの目的となる財産に関するものです。
現物出資財産等の総額が500万円以下の場合
定款に記載された現物出資財産等の総額が500万円を超えない場合です。一定額以下の財産については、検査役を選任して調査する必要がありません。
市場価格のある有価証券を市場価格以下で評価している場合
現物出資財産等に市場価格のある有価証券が含まれ、その定款記載価額が市場価格を超えない場合は、調査を省略できます。市場価格を上回る価額を記載している場合は、この例外には該当しません。
弁護士・公認会計士などの証明を受けた場合
現物出資財産等について、定款に記載された価額が相当であることの証明を受けた場合も、調査を省略できます。証明を行える専門家・法人は、次のとおりです。
- 弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法人事務弁護士共同法人
- 公認会計士、監査法人
- 税理士、税理士法人
現物出資財産等が不動産の場合は、これらの証明に加えて、不動産鑑定士による鑑定評価も必要です。
検査役の調査が必要か判断する際のポイント
まず、定款に変態設立事項を記載しているかを確認します。記載があれば、原則として検査役の調査が必要です。そのうえで、現物出資または財産引受けに関する財産について、次のいずれかに該当するかを確認しましょう。
- 現物出資財産等の総額が500万円以下
- 市場価格のある有価証券を市場価格以下で評価している
- 専門家による価額の証明を取得している
該当する例外がない場合は、発起人が裁判所へ検査役の選任を申し立て、調査を受ける必要があります。
