設立時の任務懈怠責任とは?発起人・設立時役員の損害賠償責任を解説

株式会社の設立では、発起人や設立時取締役などが、出資の履行確認や設立手続の調査といった役割を担います。これらの任務を怠り、会社に損害を与えた場合には、任務懈怠責任を負うことがあります。ここでは、責任を負う者や成立要件、他の設立責任との違いを解説します。

スポンサーリンク

設立時の任務懈怠責任とは

任務懈怠責任の意味

任務懈怠責任とは、発起人、設立時取締役または設立時監査役が、株式会社の設立について任務を怠った場合に、会社へ損害を賠償する責任です。根拠は会社法53条1項です。

責任が成立するための要件

任務懈怠責任が成立するには、設立に関する任務を負う者がその任務を怠り、それによって会社に損害が生じたことが必要です。

任務懈怠責任を負う発起人・設立時役員

発起人の責任

発起人は、設立について任務を負います。募集設立では、創立総会において会社の設立に関する事項を報告しなければなりません。これを怠って会社に損害を与えたときは、損害賠償責任を負います。

設立時取締役の責任

設立時取締役は、選任後、遅滞なく設立事項を調査します。調査対象には、現物出資財産などの価額が相当であること、価額についての弁護士などの証明が相当であること、出資の履行が完了していること、設立手続が法令や定款に違反していないことが含まれます。

設立時取締役は、これらの調査を怠り、会社に損害が生じれば、任務懈怠責任の対象になります。募集設立では、調査結果を創立総会に報告しなければなりません。

設立時監査役の責任

設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合、設立時取締役及び設立時監査役が設立事項を調査します。設立時監査役も、設立について任務を怠り、会社に損害を与えた場合には責任を負います。不足額填補責任の対象者とは異なり、任務懈怠責任では設立時監査役も対象です。

損害賠償責任の範囲と免除

複数人に任務懈怠がある場合は連帯責任

発起人、設立時取締役及び設立時監査役のいずれにも任務懈怠があった場合、これらの者は連帯して会社に対して責任を負います(会社法54条)。

総株主の同意による責任免除

任務懈怠責任は、総株主の同意によって免除できます。不足額填補責任や仮装払込み等に対する責任についても、総株主の同意による免除が認められています。

任務懈怠責任と他の設立責任との違い

  • 不足額填補責任:現物出資財産などの価額が、定款に記載または記録された価額に著しく不足する場合に、不足額を支払う責任です。任務懈怠責任と異なり、設立時監査役は対象者に含まれません。
  • 仮装払込み等に対する責任:払込みや財産の給付を仮装した場合に、仮装した出資に係る金銭の全額を支払い、または財産の全部を給付する責任です。
  • 第三者に対する責任:職務を行うについて悪意または重大な過失があり、会社債権者など第三者に損害を与えた場合の責任です。任務懈怠責任が会社に対する責任であるのに対し、第三者に対する責任は第三者に対する責任です。

まとめ

設立時の任務懈怠責任とは、発起人、設立時取締役、設立時監査役が設立に関する任務を怠り、会社に損害を与えた場合の損害賠償責任です。設立事項の調査義務や創立総会への報告義務などに違反した場合に問題となり、複数の者に任務懈怠があれば連帯責任となります。