募集株式の発行とは、株式会社が会社成立後に新しい株式を発行することです。返済を必要としない資金調達方法である一方、発行済株式総数が増えるほか、既存株主の持株比率や株価に影響を与えることがあります。そのため、会社法や定款に従って手続を進めなければなりません。
募集株式の違法発行とは
募集株式の発行が、法令もしくは定款に違反する場合、または著しく不公正な方法により行われる場合には、違法発行となる可能性があります。
募集事項を決める機関は、公開会社か否かによって異なります。公開会社でない株式会社では、原則として株主総会の特別決議が必要です。ただし、株主総会の特別決議により、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社では取締役会)に委任することができます。
これに対し、公開会社では原則として取締役会決議で決定できます。ただし、株主割当て以外の方法で、特に有利な払込金額により発行する場合は、その有利発行を必要とする理由を説明した上で、株主総会の特別決議による承認が必要です。
募集株式の発行前にできる差止請求
発行前であれば、株主は会社法210条に基づき、会社に対して募集株式の発行をやめるよう請求できます。要件は次のとおりです。
- 発行が法令または定款に違反する、または著しく不公正な方法で行われること
- その発行によって株主が不利益を受けるおそれがあること
- まだ募集株式が発行されていないこと
単に新株発行によって持株比率が下がるだけでは、直ちに差止めが認められるとは限りません。違法性や著しく不公正な方法であることに加え、株主に不利益が生じるおそれも必要です。
なお、公開会社が取締役会の決議で募集事項を決定した場合、原則として会社は、払込期日または払込期間の初日の2週間前までに、募集事項を株主へ通知または公告します。これは、株主に違法発行に対する差止請求の機会を与えるためです。
募集株式の発行後にできる新株発行無効の訴え
募集株式が発行された後は、株主は、その発行に重大な法令違反や定款違反があったことを理由として、会社法828条1項2号の新株発行無効の訴えを提起することになります。これは、発行の無効を求める手続です。
無効の訴えで請求を認める判決が確定すると、無効とされた発行は将来に向かって効力を失います。判決が確定する前から、発行の効力が当然になくなるわけではありません。
新株発行の不存在確認の訴え
募集株式が発行された後は、重大な法令違反や定款違反を理由とする新株発行無効の訴えのほか、新株発行の不存在確認の訴えを提起することもあります。
まとめ
- 募集株式の違法発行には、法令・定款違反や著しく不公正な発行がある
- 発行前で、株主が不利益を受けるおそれがある場合は、会社法210条の差止請求を検討する
- 発行後は、新株発行無効の訴えや新株発行の不存在確認の訴えを提起することになる
- 新株発行無効の判決が確定すると、発行は将来に向かって効力を失う
