募集新株予約権の発行が法令や定款に違反したり、著しく不公正な方法で行われたりする場合、違法発行となる可能性があります。発行前であれば差止請求、発行後であれば無効の訴えや不存在確認の訴えを検討します。
募集新株予約権の違法発行とは
募集新株予約権の意味
新株予約権とは、将来、株式会社に対して権利を行使することにより、株式の交付を受けることができる権利です(会社法2条21号)。募集新株予約権は、会社の募集に応じて引受けの申込みをした者に対して割り当てられます(会社法238条1項柱書)。
新株予約権の発行に際して払込みをしただけで、直ちに株主になるわけではありません。新株予約権者が新株予約権を行使することにより、株式の交付を受けることになります。
違法発行にあたる場合
- 発行手続が法令に違反している場合
- 定款に違反している場合
- 著しく不公正な方法で発行される場合
ただし、差止請求をするには、こうした問題に加えて、発行によって株主が不利益を受けるおそれが必要です。
発行に必要な決定
公開会社でない株式会社では、原則として株主総会の特別決議で募集事項を決めます。この決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社では取締役会)に委任することもできます。
公開会社では、原則として取締役会の決議で決定します。ただし、新株予約権の発行価額等が有利な条件となる場合には、株主総会の特別決議が必要です(会社法238条2項、240条1項)。必要な機関の決議を欠く発行は、法令に違反する発行となる可能性があります。
発行前なら差止請求で止められる
差止請求の要件
募集新株予約権の発行が法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正な方法で行われ、さらに株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は会社に対して新株予約権の発行をやめることを請求できます(会社法247条)。
差止請求を行う時期
差止請求は、募集新株予約権が実際に発行される前に行う必要があります。すでに発行された後は、差止請求ではなく、発行無効の訴えや不存在確認の訴えを検討します。
発行後は無効の訴えや不存在確認の訴えを検討する
新株予約権発行の無効の訴え
募集新株予約権が発行された後、その発行に重大な法令違反や定款違反があった場合、株主は新株予約権発行の無効の訴えを提起できます(会社法828条1項4号)。これは、すでに発行された新株予約権の効力を争う手続です。
無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失います(会社法839条)。
新株予約権の不存在確認の訴え
発行手続の重大な法令違反や定款違反により、そもそも新株予約権の発行自体が存在しないと評価される場合には、株主は不存在確認の訴えを提起できます(会社法829条3号)。
| 項目 | 差止請求 | 無効・不存在確認の訴え |
|---|---|---|
| 時期 | 発行前 | 発行後 |
| 目的 | 発行を事前に止める | 発行後の効力・存在を争う |
| 根拠 | 会社法247条 | 会社法828条1項4号、829条3号 |
まとめ
募集新株予約権の違法発行とは、法令や定款に違反する発行、または著しく不公正な方法による発行をいいます。発行前で、株主が不利益を受けるおそれがある場合は、会社法247条に基づく差止請求を検討します。発行後は、その発行に重大な法令違反や定款違反があった場合、無効の訴えや不存在確認の訴えを検討することになります。
