特別な法律関係とは、刑事収容施設にいる被収容者のように、一般の国民とは異なる立場に置かれた人について、目的達成に必要な範囲で人権が制約される法律関係をいいます。
もっとも、被収容者の人権が否定されるわけではありません。日本国憲法の下では、被収容者にも原則として基本的人権の保障が及びます。制約が認められるのは、逃亡や罪証隠滅の防止、施設内の規律・秩序の維持など、収容目的に関係する必要最小限の範囲です。
特別な法律関係とは
かつては、特別な法律関係にある者について、基本的人権が認められず、裁判所による審査も及ばないとする考え方がありました。しかし、基本的人権の尊重を基本原理とする憲法の下では、このような考え方は妥当しません。
現在は、被収容者にも人権保障が及ぶ一方、収容施設を適切に運営するため、必要かつ合理的な制約が許されると考えられています。たとえば、逃亡防止などのため、居住・移転の自由や集会・結社の自由には制限が加えられ得ます。
人権制約が許される条件
新聞・図書を読む自由は、憲法19条や21条の趣旨から保障されます。ただし、未決拘禁者については、次の条件を満たす場合に限り、閲読を制限できます。
- 逃亡・罪証隠滅の防止、または施設内の規律・秩序維持に必要であること
- 閲読を認めると、規律・秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生じる相当の蓋然性があること
- 制限が、その障害を防ぐための必要かつ合理的な範囲にとどまること
したがって、単に「問題が起こるかもしれない」という一般的・抽象的な危険だけでは足りません。被収容者の性向や行状、施設内の管理・保安の状況、新聞・図書の内容など、具体的な事情が考慮されます。
被収容者の人権に関する主な判例
よど号記事抹消事件(最大判昭和58年6月22日)
拘置所長が未決拘禁者の新聞記事を一部抹消した事件です。最高裁は、未決勾留の目的である逃亡・罪証隠滅の防止に加え、施設内の規律・秩序維持のため、必要かつ合理的な範囲で自由を制約できるとしました。
ただし、閲読を認めることで規律・秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生じる相当の蓋然性が必要であり、制限も障害発生の防止に必要かつ合理的な範囲に限られると判断しました。
喫煙禁止違憲訴訟(最大判昭和45年9月16日)
未決拘禁者の喫煙禁止が問題となった事件です。最高裁は、喫煙を許すことによる罪証隠滅のおそれ、火災発生時の逃走のおそれ、喫煙が嗜好品にすぎないことなどを踏まえ、喫煙禁止は必要かつ合理的な制約であるとしました。
まとめ
特別な法律関係とは、被収容者などについて、収容目的や施設の秩序維持に必要な限度で人権が制約される関係です。被収容者の人権は一律に否定されず、制約の目的、具体的な危険性、必要性、合理性、制約の程度を踏まえて適法性が判断されます。
