表現の自由は、憲法21条1項によって保障されています。社会の問題を批判したり、情報を共有したりするために重要な権利です。しかし、他人の名誉やプライバシーも保護されるため、表現の自由を理由に、他人の社会的評価を低下させる発言や投稿が無制限に許されるわけではありません。
名誉毀損的表現にも限界がある理由
名誉毀損的表現については、刑法230条の2が、個人の名誉の保護と正当な言論の保障を調整しています。表現が許されるかは、主に次の点から判断されます。
- 示された事実が公共の利害に関するものか
- 表現の目的が専ら公益を図るものか
- その事実が真実であることを証明できるか
したがって、内容が真実であるというだけで、どのような表現でも正当化されるわけではありません。公共の利害に関する事実であること、公益目的であること、真実性の証明があることは、それぞれ確認する必要があります。
真実性の証明がある場合・ない場合の扱い
刑事上の名誉毀損罪
公共の利害に関する事実を、専ら公益を図る目的で示し、その内容が真実であることを証明できる場合には、名誉毀損罪として処罰されません。
もっとも、真実性を証明できなければ直ちに犯罪になるわけではありません。行為者が事実を真実だと誤信し、その誤信について確実な資料や根拠に照らして相当な理由があるときは、名誉毀損罪の故意がなく、犯罪は成立しません。
一方、十分な資料がないまま、特定の個人の不正を断定するなどの場合には、真実と信じたことに相当な理由があるとは認められにくくなります。
なお、インターネット上の個人投稿でも判断は緩やかになりません。ネット上の表現であっても、確実な資料や根拠に基づく相当な理由が必要です。
民事上の名誉毀損
民事上は、公共の利害に関する事実を専ら公益を図る目的で示し、真実であることの証明がある場合、違法性が否定されます。また、真実性を証明できない場合でも、真実と信じたことに相当な理由があれば、故意・過失がなく、不法行為が成立しないことがあります。
刑事上は犯罪の成否、民事上は不法行為の成否が問題となるため、両者は別々に判断されます。ただし、公共の利害に関する事実であること、公益目的、真実性、相当な理由を重視する点には共通する考え方があります。
表現の自由が重視される場面と限界
対象者が公人である場合には、国民の知る権利との関係で表現の自由が重視されます。私人であっても、その社会的活動の性質や社会への影響力によっては、活動への批判に関する事実が公共の利害に関するものと判断される場合があります。
ただし、私人の私生活上の事実であれば、常に公共の利害に関する事実と認められるわけではありません。公共の利害に関する事実にあたるかは、対象者の肩書だけでなく、示された事実の内容や性質を基準に客観的に判断されます。
まとめ
名誉毀損的表現の限界は、表現の自由と個人の名誉の保護を調整して決まります。公共の利害に関する事実であること、専ら公益を図る目的であること、真実性の証明があることが重要です。真実性を証明できなくても、刑事上は、確実な資料や根拠に照らして真実と信じたことに相当な理由があれば、故意がなく名誉毀損罪は成立しません。民事上も、同様の相当な理由があれば、故意・過失がなく不法行為が成立しないことがあります。
