裁判の公開原則とは、裁判の「対審」と「判決」を公開法廷で行うという憲法上の原則です。裁判を一般に公開することで、審理が公正に進められているかを国民が確認できるようにしています。
もっとも、一定の要件を満たす場合には、対審だけを非公開にできます。ただし、非公開の対審が認められる場合でも、判決まで非公開にできるわけではありません。
裁判の公開原則とは
憲法82条が定める公開原則
憲法82条1項は、裁判の対審および判決を公開法廷で行うと定めています。
対審とは、裁判官の前で当事者が口頭でそれぞれの主張を述べる手続です。一方、判決とは、当事者の申立てに対して裁判所が示す最終的な判断をいいます。
裁判を公開するのは、裁判所の判断過程を外部から確認できるようにし、審判の公正を保障するためです。
公開される手続と、非公開にできる手続の違い
憲法上、非公開にできる可能性があるのは「対審」です。判決は、対審が非公開で行われた場合でも、公開法廷で言い渡さなければなりません。
つまり、裁判全体を自由に非公開にできるという意味ではなく、例外的に審理の一部である対審を非公開にできるということです。
裁判の対審が非公開になる場合
公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある場合
裁判官の全員一致により、対審を公開すると公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあると判断した場合、対審を非公開にできます。
ただし、これは公開原則に対する例外です。要件を満たさないのに、裁判所の判断だけで非公開にできるわけではありません。
例外が認められても、常に公開しなければならない事件
次の事件では、上記のおそれがある場合でも、対審を非公開にできません。
- 政治犯罪に関する事件
- 出版に関する犯罪に関する事件
- 憲法第3章で保障された国民の権利が問題となる事件
これらの事件では、対審を常に公開する必要があります。
裁判の公開原則に関する判例
北海タイムス事件(最大判昭和33年2月17日)
刑事裁判の公判廷で写真撮影などをする際、裁判所の許可を必要とする仕組みが問題となりました。最高裁は、裁判の公開原則は審判の公正を保障するためのものだとしました。
その一方で、取材活動であっても、審理の秩序を乱したり、被告人などの正当な利益を不当に害したりする場合には制限できると判断しています。公開原則があるからといって、法廷内の撮影や取材が無制限に認められるわけではありません。
ビデオリンク方式による証人尋問に関する判例(最判平成17年4月14日)
証人と傍聴人の間に遮へいを設けたり、ビデオリンク方式で証人尋問を行ったりすることが、公開原則に反するかが争われました。
最高裁は、証人尋問が公判期日に行われ、審理自体が公開されている限り、公開原則に違反しないと判断しました。証人保護のための措置を取っても、直ちに裁判が非公開になるわけではありません。
まとめ
裁判の公開原則とは、対審と判決を公開法廷で行うという憲法上の原則です。公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあり、裁判官全員が一致した場合には、対審のみ非公開にできます。
ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪、憲法上保障された国民の権利が問題となる事件の対審は、常に公開が必要です。また、撮影制限や証人保護のための措置は、裁判の公開原則と直ちに矛盾するものではありません。
