債権者代位権とは、債務者が第三者に対して持っている権利を、債権者が債務者に代わって行使する制度です。では、代位行使によって第三者から回収した金銭は、債権者のものになるのでしょうか。
結論として、債権者代位権そのものに優先弁済の効力はありません。ただし、債権者が受け取った金銭を債務者に引き渡す義務と、債務者に対する自分の債権を相殺することで、結果的に優先弁済を受けたのと同じ状態になる場合があります。
債権者代位権行使の効果は原則として債務者に帰属する
代位行使で得た金銭は債務者の財産になる
債権者代位権は、債権者自身の権利として第三債務者に請求する制度ではありません。債務者が持つ権利を、債権者が自己の名で行使する制度です。
そのため、代位行使によって第三債務者から支払われた金銭は、原則として債務者に帰属します。債権者は本来、その金銭を債務者に渡したうえで、任意の弁済を受けるか、強制執行によって回収することになります。
一定の場合は債権者が直接受け取れる
債務者が第三債務者からの受け取りを拒んでいると、代位権を行使しても目的を達成できません。そこで、金銭の支払いや動産の引渡しについては、債権者が第三債務者に対し、自分へ直接支払うよう求めることができます(民法423条の3前段)。
ただし、債権者が直接受け取れることと、受け取った金銭が当然に債権者の財産になることは別です。第三債務者が債権者に支払うと、被代位権利はその限度で消滅します(同条後段)。
相殺によって事実上の優先弁済を受けられる
引渡債務と自分の債権を相殺する
債権者が第三債務者から金銭を受け取ると、その金銭を債務者に引き渡す義務を負います。一方、債権者は債務者に対して、貸金などの債権を持っています。
そこで、債権者は、債務者に対する金銭の引渡債務と、自分が債務者に対して持つ債権を相殺できます。相殺とは、互いに負っている金銭の支払義務を、対当額で消滅させる仕組みです。これにより、債権者は金銭を実際に債務者へ渡さず、その金額分の弁済を受けたのと同じ結果になります。
相殺による回収の具体例
たとえば、AがBに対して100万円の貸金債権を持ち、BがCに対して500万円の売掛代金債権を持っているとします。BがCから代金を回収しないため、Aが代位行使し、Cから100万円を直接受け取った場合、その100万円は本来Bに帰属します。
しかし、AはBに対して100万円を引き渡す義務を負う一方、Bに対して100万円の貸金債権を持っています。この2つを相殺すれば、AはBに金銭を渡すことなく、貸金債権を実質的に回収できます。
優先弁済は債権者代位権そのものの効果ではない
このように、債権者代位権を利用した債権者が他の債権者より先に回収できるように見えることがあります。しかし、これは債権者代位権に優先弁済権があるからではありません。
事実上の優先弁済を生じさせるのは、受け取った金銭の引渡債務と、債務者に対する自分の債権との相殺です。したがって、債権者代位権の効果と、相殺による回収の効果は区別して理解する必要があります。
