抗弁権付きの債権を自働債権として相殺できる?

相手方に抗弁権が認められる債権を自働債権とする相殺は、できません。代表的なものとして、相手方に同時履行の抗弁権が認められる場合が挙げられます。

抗弁権付きの債権を自働債権として相殺できる?

結論:相殺できない

抗弁権付きの債権とは、相手方に抗弁権が認められている債権です。このような債権を自働債権とする相殺は、することができません(大判昭13・3・1)。

相殺できない理由

自働債権と受働債権

相殺とは、2人の者が互いに同種の目的を有する債務を負担している場合に、一方から相手方に意思表示をして、対当額の範囲で双方の債務を消滅させることです。

相殺する側の債権を自働債権、相殺される側の債権を受働債権といいます。

抗弁権を実質的に失わせるため

例えば、自働債権が売主の売買代金債権で、買主に同時履行の抗弁権が認められる場合を考えます。

この場合、買主は売買目的物の引渡しを受けるまで、代金の支払いを拒むことができます。ところが、売主が売買代金債権を自働債権として相殺できるとすると、買主は売買目的物の引渡しを受けていないのに、支払いを強制されるのと同じ結果になります。

そのため、同時履行の抗弁権など、相手方に抗弁権が認められる債権を自働債権とする相殺は、することができません。

具体例

売主が買主に対して売買代金債権を有している一方で、売主が買主に対して別の金銭債務を負っているとします。売主がまだ売買目的物を引き渡しておらず、買主に同時履行の抗弁権が認められる場合、売主は売買代金債権を自働債権として相殺することができません。

相殺を認めると、買主は目的物の引渡しを受けていないのに、売買代金を支払ったのと同じ結果になるためです。

まとめ

相手方に抗弁権が認められる債権を自働債権とする相殺は、できません。

特に、売買代金債権のように、相手方に同時履行の抗弁権が認められる債権が代表例です。相殺を検討する際は、自働債権に相手方の抗弁権が付いていないかを確認する必要があります。