授益的行政行為の職権取消しとは?公益上の必要性と判例を解説

授益的行政行為の職権取消しとは、営業許可や認可など、国民に利益を与える行政行為について、処分をした行政庁が自らその効力を取り消すことです。

もっとも、許可を受けて営業している者から許可を奪うことになるため、行政庁が自由に取り消せるわけではありません。判例は、相手方が受ける不利益と、取消しをしないことで公共の福祉に生じる不利益を比較し、放置することが著しく不当な場合に限り、職権取消しを認めています。

授益的行政行為の職権取消しとは

授益的行政行為と職権取消しの意味

授益的行政行為とは、行政庁が国民に許可・認可などの利益を与える処分です。職権取消しは、その処分を受けた人からの申立てによるのではなく、処分庁が自らの判断で取り消すものをいいます。

職権取消しは、処分がされた時点ですでに違法または不当であったことを理由とします。そのため、取り消されると、原則として処分の成立時にさかのぼって効力が失われます。もともと違法な処分を是正する制度であるため、明文の規定がなくても認められるとされています。

「撤回」との違い

職権取消しと撤回は、どちらも行政行為の効力を失わせますが、理由と効果が異なります。

  • 職権取消し:成立時から違法・不当だった処分を、成立時にさかのぼって失効させる。
  • 撤回:成立時は適法だった処分について、その後の事情を理由に、将来に向かって効力を失わせる。

職権取消しが制限される理由と要件

授益的行政行為を取り消すと、相手方が得ていた利益や行政庁への信頼が失われ、法的安定性も害されます。そこで、次の不利益を比較して判断します。

  • 取消しによって相手方に生じる不利益
  • 取消しをせず、違法・不当な処分の効果を維持する不利益

比較の結果、処分を維持することが公共の福祉に照らして著しく不当といえる場合に限り、職権取消しが許されます。

また、処分時の事情を見て違法・不当が認められない場合は、そのことを理由とする職権取消しはできません。不服申立期間が経過していても取消しが当然に不可能になるわけではありませんが、取消しによって生じる不利益と、処分の効果を維持する不利益を比較考量する必要があります。

職権取消しに関する主な判例

最判昭和43年11月7日

不服申立期間が経過して争えなくなった処分であっても、行政庁が職権取消しをする余地はあるとしました。ただし、取消しによる不利益と処分を維持する不利益を比較し、放置が公共の福祉に照らして著しく不当な場合に限ると判示しています。

最判昭和33年9月9日

授益的な処分を相手方の利益に反して取り消すには、特段の公益上の必要性が必要であるとしました。

最判平成28年12月20日

職権取消しの可否は、処分時点の事情を基準に、その処分に違法・不当があったかを判断すべきだとしました。したがって、処分時に違法・不当がなかった場合に、それを理由として職権取消しをすることは許されません。

職権取消しの手続

授益的行政行為の職権取消しや撤回によって相手方が不利益を受ける場合、行政手続法上の不利益処分に該当します。そのため、原則として、意見陳述のための手続を執らなければなりません(行政手続法2条4号、13条)。