職務質問に伴う所持品検査は、原則として本人の承諾を得て行う任意の調査です。ただし、同意がないことだけで、すべての検査が直ちに許されないわけではありません。
一方、拒否している人のポケットに手を入れて所持品を取り出すなど、捜索に近い方法は、任意調査の限界を超えることがあります。ここでは、所持品検査が許される範囲を解説します。
職務質問に伴う所持品検査は原則として任意で行われる
職務質問に付随する所持品検査の位置づけ
職務質問に付随する所持品検査は、警察官職務執行法2条1項に基づく職務質問に関連して行われる調査です。
ただし、所持品検査は、警察官が当然に強制的に行える調査ではありません。任意調査とは、調査の相手方の任意の協力により行う調査をいいます。
原則は本人の承諾が必要
そのため、所持品の提示を求める場合も、本人が承諾した範囲で確認するのが原則です。任意である以上、警察官が本人の意思に反して所持品を調べるなど、強制にわたることは許されません。
同意がなくても許されることがある所持品検査と限界
判断では複数の事情が考慮される
本人の同意がない場合でも、具体的な状況によっては、一定の所持品検査が許されることがあります。判断では、主に次の事情が考慮されます。
- 職務質問や所持品検査の目的・性格
- 検査を行う必要性
- 検査を急ぐ緊急性
- 検査によって侵害される個人の利益
- 検査によって保護される公共の利益
- 検査の具体的な方法や態様
もっとも、同意がない場合に許されるのは、捜索に至らず、強制にわたらない範囲の行為に限られます。必要性や緊急性があることだけで、強制的な検査が正当化されるわけではありません。
限界を超える検査
本人が拒否しているのに、警察官が衣服の内側に手を入れて所持品を取り出す行為は、プライバシーへの侵害が大きく、捜索に類するものとして問題となります。
判例が示した職務質問に伴う所持品検査の限界
最判昭和53年9月7日の判断
最高裁は、職務質問に付随する所持品検査について、原則として所持人の承諾を得て行うべきだとしました。そのうえで、承諾がなくても、捜索に至らず、強制にわたらない行為であれば、必要性や緊急性、個人の利益と公共の利益の権衡などから、具体的状況に照らして相当な限度で許される場合があると判断しました。
しかし、この事件では、本人の承諾なしに上着の内ポケットへ手を入れて所持品を取り出し、検査しました。最高裁は、プライバシー侵害の程度が高く、方法も捜索に類するものとして、職務質問に伴う所持品検査の許容限度を超えると判断しています。
つまり、「任意調査だから同意がなければ一切許されない」でも、「必要性や緊急性があれば自由に調べられる」でもありません。必要性や緊急性があっても、方法が強制的で捜索に類するものであれば、所持品検査の許容限度を超えることがあります。
まとめ
- 職務質問に伴う所持品検査は、原則として本人の承諾に基づく任意調査です。
- 同意がなくても、捜索に至らず、強制にわたらない相当な行為は例外的に許されることがあります。
- 必要性・緊急性、個人の利益と公共の利益の権衡、検査の方法や態様が判断のポイントです。
- 拒否している人のポケットに手を入れるなど、捜索に類する行為は許容限度を超えることがあります。
