取消判決の既判力とは?行政事件訴訟法における効力をわかりやすく解説

取消訴訟で原告の請求が認められると、行政処分や裁決が取り消されます。それだけでなく、判決が確定した後の主張や裁判にも影響を及ぼします。その代表的な効力が「既判力」です。

この記事では、取消判決の既判力の意味と、形成力・第三者効・拘束力との違いを説明します。

取消判決の既判力とは

既判力の基本的な意味

既判力とは、判決が確定した後、同一事項について、当事者が判決と矛盾する主張をできなくなり、裁判所も判決に抵触する判断をできなくなる効力です。根拠は民事訴訟法114条にあります。

重要なのは、既判力が生じるのは判決を言い渡した時ではなく、判決が確定した後だという点です。

取消訴訟における既判力の働き

その判決が確定した後、同一事項について、当事者が確定判決と反対の前提で主張したり、裁判所が反対の判断をしたりすることはできません。

つまり既判力は、処分そのものを消滅させる効力ではなく、確定した判決に矛盾する主張や判断を、後の手続で許さない効力です。

既判力が生じる判決と事情判決の違い

ここでいう取消判決は、取消訴訟の請求を認め、処分や裁決を取り消す認容判決を指します。

これに対し、処分や裁決が違法であっても、これを取り消すことで公の利益に著しい障害が生じ、取り消すことが公共の福祉に適合しないと認められる場合、裁判所は請求を棄却できます。これを事情判決といいます。事情判決では、処分や裁決が違法であることは宣言されますが、処分や裁決自体は取り消されません。

既判力のポイントを具体的に確認

  • 発生時期:判決が確定した後
  • 対象:確定判決で判断された同一事項
  • 当事者への効果:判決と矛盾する主張ができない
  • 裁判所への効果:判決と抵触する判断ができない

既判力と取消判決のほかの効力との違い

形成力との違い

形成力とは、取消判決によって処分や裁決の効力が遡及して消滅し、当初から処分がなかったのと同じ状態になる効力です。既判力が「同一事項について矛盾する主張や判断を許さない効力」であるのに対し、形成力は「処分そのもの」に及びます。

第三者効との違い

取消判決による形成力は、訴訟の当事者だけでなく第三者に対しても及びます(行政事件訴訟法32条1項)。したがって、既判力と、第三者に対する取消判決の効力は区別して理解する必要があります。

拘束力との違い

取消判決は、その事件について、処分や裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項)。拘束力とは、行政庁が判決の趣旨に従う義務を負うことです。

申請を却下または棄却した処分、あるいは審査請求を却下または棄却した裁決が判決により取り消された場合、行政庁は判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分または審査請求に対する裁決をしなければなりません。

このように、既判力は「確定判決と矛盾する主張・判断を許さない効力」、拘束力は「行政庁を判決の趣旨に従わせる効力」です。

まとめ

取消判決の既判力とは、判決確定後、同一事項について当事者が判決と矛盾する主張をできず、裁判所も抵触する判断をできなくなる効力です。

処分の効力を遡って消滅させる形成力や、行政庁を判決の趣旨に従わせる拘束力とは役割が異なります。取消判決を理解する際は、既判力・形成力・第三者効・拘束力を分けて考えることが大切です。