行政庁が申請を放置した場合の国家賠償責任とは?申請に対する不作為の違法性を解説

行政庁に申請をしたのに、長期間にわたって何の処分もされないことがあります。このような申請に対する不作為は、直ちに違法となるわけではありません。しかし、一定の事情があれば、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任が問題になります。

行政庁が申請を放置すると国家賠償責任を負うことがある

国家賠償法1条1項の基本的な成立要件

国家賠償法1条1項は、国または公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたとき、国または公共団体が賠償責任を負うと定めています。

申請に対する不作為について責任が認められるには、一般に次の点が問題となります。

  • 行政庁の対応が公権力の行使に当たること
  • 公務員が職務を行うについて対応したこと
  • 故意または過失があること
  • 対応が違法であること
  • 申請者に損害が生じたこと

賠償義務を負うのは国または公共団体であり、担当公務員個人が直接責任を負う仕組みではありません。

申請への応答をしないことも公権力の行使に当たる

申請を受けた処分庁が処分をしない場合、その不作為が国家賠償法上違法かどうかが問題になります。

申請に対する不作為が違法になる判断基準

行政庁には相当な期間内に応答処分をする作為義務がある

申請を受けた処分庁には、不当に長期間にわたらないうちに応答処分をすべき条理上の作為義務があります。

処分に必要な期間を超えただけでは違法とは限らない

最高裁判所は、客観的に処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分ができなかったことだけでは足りず、その期間に比べてさらに長期間にわたり遅延が続き、その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、その努力を尽くさなかったことが必要だと判断しています(最判平成3年4月26日)。

したがって、申請の処理に時間がかかったという事実だけで、直ちに不作為が違法になるわけではありません。

不作為が違法とされると国家賠償責任が問題になる

申請者の焦燥や不安も保護される利益になり得る

処分を受けられない状態が続くと、申請者は焦燥や不安の気持ちを抱くことがあります。最高裁判所は、相当期間内に応答処分を受けることによって焦燥や不安の気持ちを抱かされない利益について、内心の静穏な感情を害されない利益として、不法行為法上の保護の対象になるとしています。

不作為だけでなく故意・過失と損害も必要になる

行政庁の対応が遅れていても、違法性だけで国家賠償責任が成立するわけではありません。通常期待される努力を尽くさなかったこと、故意または過失があること、申請者に損害が発生したことなどを満たす必要があります。

まとめ

  • 行政庁には、申請に対して不当に長期間にわたらないうちに応答処分をする条理上の作為義務がある
  • 処分に必要な期間を超えただけで、直ちに不作為が違法になるわけではない
  • 遅延が長期化し、通常期待される努力で解消できたのに処分庁がその努力を尽くさなかった場合、違法となる可能性がある
  • 国家賠償には、違法性のほか故意・過失と損害も必要である